2017年秋に、小林市に移住した女性がいます。それが、フランス出身のロレーヌ・ロジェさん。
彼女は、小林市には「本物の日本人がいる」と言います。もし日本の他の場所に住むとしても、候補が思いつかないくらい小林が好きだ、とも。
彼女はなぜ、小林に惚れ込み、そして暮らし働いているのでしょうか?
経緯や想いを伺ってきました。
ロレーヌ・ロジェ
フランスのラ・フレーシュ近くの人口1,000人ほどの村で生まれ育つ。大学で日本語に出会ったことをきっかけに、学生時代に日本でのインターンと留学を経験。卒業後フランス国内で就職するも、日本が忘れられず再度来日、名古屋にて就職。2年半の勤務を経て宮崎県小林市へ移住。現在は「小林まちづくり株式会社」観光推進部所属。
外国出身者の目線で、小林の観光と発信を考える
── ロレーヌさん、初めまして。まずは、お仕事について教えていただけますか?
ロレーヌ 「小林まちづくり株式会社」という企業の観光推進部に所属して、小林に観光客を増やすための様々な取り組みをしています。
小林は、日本人の観光客にも来てほしいんだけれど、別途海外からの観光客も増えてほしい。でも、それを同じ発信でまかなうのは難しいので、私が外国人目線で小林の観光を捉え直したり、展示会出展やサイト作りなどの国外向けのPR・情報発信、翻訳等を担当しています。
小林市の魅力をまとめたPR動画
── 広く、小林の広報活動をされているんですね。
ロレーヌ そうですね。とはいえ今の仕事は、私が小林に移住してからできたポジション。だから決まりきったルールがあるわけじゃないんです。たとえば、先日フランス・パリで行われた展示会「Japan Expo(ジャパンエキスポ)」に小林として出展しました。その際のパンフレットは、じつは自作したんです(笑)。デザインをやったことはなかったんだけど、勉強して。
── へえ……!
ロレーヌ それは、私にとってすごくいい体験でした。間違いなく、素晴らしい。フランス、日本と働いたことがあるのだけれど、小林での仕事は、今までで一番いい仕事だと感じています。
一人で考えるのではなくて、上司や同僚が一緒に考えてくれるし、アイディアがよければ「ぜひ進めてください」と応援もしてくれるので、自由度の高い楽しい仕事です。
日本人と外国人の観光目線は、全然違う。体験&ブラッシュアップが大切
ロレーヌ 日本人と、外国人の観光の仕方は本当に全然違います。だから、自分はもちろん、外国人留学生を小林に招き、実際に観光体験をしてもらって、意見を集める作業も大切にしています。
たとえば果物狩り。日本人は季節になるととても喜んで果物狩りに出掛けるけれど、外国人にはあまりウケがよくないみたい。「取って食べるだけ?」ってなっちゃうし、1種類の果物を1時間、2時間食べ続けるって胃がもちません。私も正直、そんなに好きじゃないですね。だから外国人の観光コースからは省く。
あとはキャンプ。多くの日本人にとってキャンプの中心は、バーベキューである印象を受けます。私も最初、お肉を焼き続けることにびっくりしました! でも、フランス人にとってのキャンプは、バーベキューのほかに散歩、カヤック、サップ、お昼寝などアクティビティも含めてのもの。私たちは、休暇中もたくさん運動がしたいんです。
だから、小林にはすでに良いキャンプ場・バーベキュー場はあるから、その周りにもっとアクティビティ施設を作ったらよいのではないか? など、そういった提案をします。
そして先日、私が小林に移住して以来初のフランス人観光客が2人、来てくれたんです。
── わあ! それは嬉しいですね。
ロレーヌ 雨でアウトドアアクティビティが全然できなかったり、翻訳者が私しかいなかったり、空港や駅からの送迎が難しかったり……たくさん課題も見つかったのですが(笑)。今までの経験を反映したプランに沿ってご案内したら、本当に小林を楽しんでくれた様子で、とても嬉しかったんです。
小林市は「本当の日本人に会える街」
── 彼らは、小林のどういったところに魅力を感じてくださったんですか?
ロレーヌ まず自然がいっぱいで、食べ物も水も美味しい。宮崎牛も美味しい。地元のひとが人懐こくて、温泉やスナックにいくと「わぁ、どこからきたんですか?」と気軽に声をかけてくれる。温泉だとすっぽんぽんなのに、「フランスから来た」というと「おしゃれね〜」なんて返してくれて(笑)。そうやって、地元の方々と交流ができるって、外国人観光客にとってすごく嬉しいことなんです。
── それは、私たちが海外旅行に行った時も同じかもしれませんね。
ロレーヌ そうそう。小林にいる人って、「本当の日本人」みたいなの。
── 「本当の日本人」……?
ロレーヌ うーん。これはとっても難しいね。感覚的なものだから。でも、少なくとも私にとっては「ずっと田舎で暮らしている日本人」が「本当の日本人」のように感じられる。
たとえば、東京の浅草や京都は、とても美しくて感動する。でも、有名な観光地すぎて観光客しかいない。それは、本当に外国人観光客はがっかりするね。対して小林には、観光客はほとんど来ていないから(笑)。地元のひとの暮らしがちゃんと見られて、体験できて、話せて、スナックでは一緒に日本の歌を歌うことができる。
── スナックが観光に一役買っているんですね(笑)。
ロレーヌ そう。小林には、ニセモノがない。観光者向けのスポットがまだ出揃っていないということは、「自分で魅力を発見できる余白がある」ということ。外国人にとっては、それがじつは一番大切。自分が見つけた場所の方が愛着がわいて、つい友だちに「こんな素敵な場所があったよ」って話したくなる。
小林にはそれがあって、かつ日本の暮らしがきちんと垣間見られるから。それは本当に価値のあることだと思っています。さっき言った、「本当の日本人」には、「暮らしている土地を大好きなひと」という意味も含まれているのかもしれないですね。小林のひとたちは、みんな小林を大好きだから。
小林に来たきっかけは「日本の田舎で暮らしてみたかったから」
── ロレーヌさんが日本にいらっしゃったきっかけは、大学のインターンだと伺っています。
ロレーヌ そうです。私はフランスの小さな田舎町出身で、大学時代に日本語を専攻。その時に、カリキュラムで日本へのインターン経験が必須でした。それで、20歳の時に初めて東京の原宿へ。
── 原宿!
ロレーヌ まるで映画の中の世界だと驚きました。フランス人にとって、日本は「閉じていた期間がある国」。だから、やっぱりとても興味深い。
── 鎖国ですね。
ロレーヌ はい。でも、実際に日本に来てみたら、ひとが優しくて、ご飯が美味しくて、文化も歴史も興味深くて大好きになりました。だから、帰国後、今度は1年間の留学生として日本を再訪しました。留学後はフランス国内で就職したものの、その頃には自分で思っていた以上に日本が大好きに。両親が心配するくらいの日本シックになって……(笑)。
── それは、どうしてですか……?
ロレーヌ うーん。単純に日本が大好きだったから、もっと住みたかった。あとは、就いた仕事が、日本とは全然関係のない仕事だったから、せっかく勉強した日本語をどんどん忘れていってしまうのが辛かった。もっとチャレンジしたいなぁという気持ちもありました。一人で異国を旅して、仕事をして。自分で自分のキャリアを作りたいなって。
フランスは、失業率が9%で、今は経済があまり安定していないんです。その点でも日本は優れている。日本は、大学で勉強したことと、全く関係のない仕事に就くことも多いでしょう? 魅力的でした。フランスでは、専門の勉強をしなければ、就けない仕事が本当に多くて。
それで、運よく名古屋の企業に就職が決まったので、晴れて日本へ。本当にいい企業だったんだけれど、2年半ほど勤務したら、外国人だし、女性だからかな。昇進の壁が見えた気がしました。やっぱり私はもっと、チャレンジがしたかったんです。
「フランスに帰ろうかな……」と思い始めていたところに、知人の紹介で出会ったのが、今の会社「小林まちづくり株式会社」の求人でした。
ジブリの映画を観て「日本の田舎はいいところ」というイメージがあったし、東京と名古屋という日本の都会暮らしは経験した。「日本の田舎に住んでみたい」という気持ちもあったし、新しい仕事だったから、願ってもいない出会いでした。
小林市でホームステイ。これからも楽しくここで、暮らし続けたい
ロレーヌ 実際に住んでみて、今は本当に小林が好きです。
自然がたくさんだから散歩も楽しいし、ランニングもできるし、今は霧島連山の目の前に住んでいるから、毎朝眺められて、毎朝感動してる。
ホストファミリーと一緒に住んでいるんだけどすごく優しくて、嘘がなくて、家族みたいに接してくれてとても幸せ。洗濯物の出すタイミングとか回数とか、そういった些細なこともちゃんと指摘してくれる。
日本人は、本音と建前みたいなところがあって、フランスにはそんな言葉はないから(笑)。日本に来た最初の頃はそれがわからなくて、「空気を読む」のを多分間違えちゃって、嫌な思いをさせてしまったひともいたかもしれない。でも、今の家族はそういう必要がなくて、楽しく暮らさせてもらっています。
あとは、日本人と一緒に住むことで日本語も上達するかなって。小林に来てからは、方言も勉強しています。
「フランス語に似ている」ことで話題になった小林市のPR動画
ロレーヌ 本当に思っていることは、二回言うのがとてもかわいいですね。たとえば美味しい時は「うんめもうんめ」。暖かい時は「ぬきもぬき」、寒いときは「さみもさみ」。かわいいは「むぜ」で、「むぜぇね」でも通じるけれど、「むぜぇもむぜぇね」って二回続けた時の方が、本当にかわいいと思っている可能性が高い(笑)。
あれ、けど「よかにせ(イケメン)」は本当に思っていても、二回続けないね。方言は奥深い……!
そういえば、行きつけのスナックもできました。「白猫」。英語の先生をやってる、同じフランス出身の「メロン」という名前の友だちと、そこでよく飲んでいます。
東京で暮らしている留学生の友だちたちは、皮膚の病気だったりストレスを抱えたりしてることも多いです。ぜひ小林に来て欲しい。ここのほうが住みやすくて、食べ物もおいしいし、水きれいだし。ほんとにゆっくり。ペースがすごくいいね。
2019年には九州でラグビーワールドカップが開催されるから、その誘致ももっと頑張りたいし、その次には2020年の東京オリンピックも控えています。仕事でやりたいこともたくさんあるし、暮らしももっと楽しみたい。
もし、万が一小林で暮らせなくなったとしたらフランスに帰るって思うくらい、小林のことは大好き。小林以上に好きになれる、暮らしたいと思える場所は日本にはないと思っています。
これからも、楽しみながらここで生活して、その魅力と幸せをたくさんの国内外の方々に伝えていけたらいいなと思っています。
文・写真/伊佐知美
(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)
非公開: 地元を愛する心意気に惚れ込んで【宮崎県小林市】特集、はじめます。
これまでの【宮崎県小林市】の記事はこちら
- 非公開: 地元を愛する心意気に惚れ込んで【宮崎県小林市】特集、はじめます。
- 【宮崎県小林市】歳をとっても“生きている心地”を感じられる場所をつくりたい|社会福祉法人「ときわ会」副理事長・坂口和也
- 【宮崎県小林市】実演販売の強みを活かして「買ってでも食べたいお菓子」をつくる。洋菓子工房プチ・パリ前原宏美
- 【宮崎県小林市】「わたしが一番のファン」。夫婦の信頼関係からつくられる玉光園のキノコ
- 【宮崎県小林市】「寄り添うとは、“いつでもそばにいる”と思ってもらえること」福祉タクシー きずな・四位純徳
- 【宮崎県小林市】野菜が好き。ただそれだけで夢中になれる。野菜のお姉さん・大角恭代
- 【宮崎県小林市】本場・北海道じゃなくてもできる。自分にしかできないチーズづくり|ダイワファーム代表・大窪和利
- 【宮崎県小林市】「作品を置いた場所が自分の空間になる」陶芸家・川路庸山のタブーなき不思議な世界
- 【宮崎県小林市】川﨑クラフト株式会社の手づくり「木製ままごとキッチン」は、老若男女が喜ぶ贈り物
- 【宮崎県小林市】目指すは“地球にやさしい男”。ホリケンファーム・堀研二郎
- 【宮崎県小林市】愛されるモノづくりの本質とは?銀座の名店シェフに選ばれる野菜農家の哲学
- 【宮崎県小林市】「風の丘ガーデン」を営む澁田園芸が目指す、家族でつくる花のある暮らし
- 【宮崎県小林市】「美味しさの秘密、全部教えるよ。同じようにはつくれんから」すき酒造杜氏・内嶋光雄
- 【宮崎県小林市】俺たちは「西諸県軍(ニシモロカタグン)」を結成した。故郷を好きになりたいから、ノンスポンサーで。
- 【宮崎県小林市】両親と兄の死を経て、それでも「この道でよかった」と言えるように。野菜ビュッフェツナギィーナ・橋本夫妻【夫婦対談】
- 【宮崎県小林市】理想の暮らしのためのスタートラインに立ち、いま思うこと|元・地域おこし協力隊 瀬尾絵美
- 【宮崎県小林市】ものをつくるのは孤独な作業。それが自分に向いていた|革製品ブランド「Lepanjao(レパンジャオ)」今村孝矢
- 【宮崎県小林市】「幸せになる方を選びましょう。自分の人生だもの」ヨガインストラクター 小川奈央
- 【宮崎県小林市】知るだけじゃダメ。ここへ来て、見て、感じてみて。農家民泊がいま必要なワケ
- 【宮崎県小林市】美大時代にバスに住んでいた?「廃バスでの暮らしが僕の原点」ばすぷすん工房・浜崎誠太郎
- 【宮崎県小林市】やりたい仕事よりも「望まれる仕事」を選んだ─「小原梨園」3代目に聞く、その理由
- 【宮崎県小林市】「クッチーナ・マンマ・デル・ペッシェ」80年続く魚屋発のイタリア家庭料理を召し上がれ
- 【宮崎県小林市】地域おこし協力隊の語る「マルシェの本質」とは?
- 【宮崎県小林市】シェフ歴20年。地元・名古屋を愛するぼくが小林の地域おこし協力隊になったわけ|甲斐崇悟
- 【宮崎県小林市】「あれを選んだらよかった」と考えるのは、無し。それが生き方の基本
- 【宮崎県小林市】絶対に妥協しないものづくりを。国内シェア50%のサーフボードブランクス「kiriflex」ができるまで
- 【宮崎県小林市】「今年もおんなじ味だね」が褒め言葉。大出水製茶・3代目のお茶づくり
- 【宮崎県小林市】に「TENAMU交流スペース」が誕生!地域商社・BRIDGE the gapが交流スペース運営に注力する理由とは?
- 【宮崎県小林市】一流の仕事とは?籐(とう)の家具づくり名人「現代の名工」に聞く
- 【宮崎県小林市】個人と法人、それぞれにできる農業がある。菊農家・高津佐雄三さんが目指す「あかるい農村」とは?
- 【宮崎県小林市】編集部みんなが紹介します!アクセス方法など初めて訪れる際に知りたい基礎情報まとめ
- 地域で「何をするのか」より、「どう暮らしていきたいか」を考える【地域特集イベントレポ】
- 【宮崎県小林市】「なんにもない地域なんてない」。身近な文化財から見えてくるのは現代までつながるストーリー
- 【宮崎県小林市】ここは、本当の日本人に出会える場所|小林まちづくり株式会社 ロレーヌ・ロジェ
- 【宮崎県小林市】生産・加工・販売を一農家で実現する徳永農園の、「何度失敗しても、新しいことにチャレンジできる」理由
- 咲いている日も咲かない日も訪れたい、生駒高原【宮崎県小林市】
- 【宮崎県小林市】「このレストランに旅をしに来てもらえるように」。Kokoya de kobayashi オーナーシェフ・地井潤
- 【宮崎県小林市】で幸せなノマド暮らし体験!もとくら編集部オススメの3スポットを紹介します
- 【宮崎県小林市】「生甘酒と糀のおいしさを届けて、お米の魅力を底上げしたい」rice shop 糀や 杉元祐子
- 「元気になって何をしたいか」を大切に、心と体をトータルケアしたい【宮崎県小林市】
- 【イベントレポ】灯台もと暮らし大忘年会〜小林を選んでくれたひとがたくさんいるって気づけた〜(2/3)
- 【ファインダーと私】恋の続きは、旅で。あたらしい自分に出会いに 〜宮崎県小林市〜
- 【ファインダーと私】陽だまりのように地元を愛すひとたちが暮らす街〜宮崎県小林市〜
- 【告知】12/11(日)「灯台もと暮らし大忘年会〜高知県嶺北地域と宮崎県小林市のみなさんを迎えて〜」を開催します!
- 【宮崎県小林市】カフェを開く夢を追いかけ行き着いたのは、「そのひとがそのひとらしく居られる空間をつくること」|musumiオーナー・上岡唯子
- 【宮崎県小林市】焼肉店「牛心」オーナー・坂下晃平さんの夢は100店舗経営。夢を動かすのは、いつだって自分だ
- 【宮崎県小林市】朝から晩まで北霧島の自然を堪能できるコンテナハウス「キレイビレッジ」
- 【宮崎県小林市】地域の人に育てられて、ここまで来た。23歳で始めた写真館で、50年撮り続けた笑顔。川原写真スタジオ・川原信幸
これまでの【宮崎県小林市】の記事はこちら
- バズを生むより地元出身者を振り向かせたい!宮崎県小林市発の「てなんど小林プロジェクト」
- 好きじゃないと来てなんて言えない。宮崎県小林市 移住相談窓口 上野祥枝
- 【地域おこし協力隊】子育てのために移住。自然と共に暮らしたい|宮崎県小林市・瀬尾絵美
- 【地域おこし協力隊】子どもが喜んでいる姿を見るのが一番の幸せです|宮崎県小林市・伊藤斉
- 【地域おこし協力隊】小さな生業を複数持ちながら暮らしたい|宮崎県小林市・細川絵美
- 【地域おこし協力隊】ミツバチと触れ合う体験を作りたい。定住に向けて養蜂と農業に取り組む|宮崎県小林市・田地祐造
- 【地域おこし協力隊】地域の若者と一緒に仕事をしよう|宮崎県小林市・勝本哲也
- 【宮崎県小林市】実演販売の強みを活かして「買ってでも食べたいお菓子」をつくる。洋菓子工房プチ・パリ前原宏美
現在鋭意執筆中…