誰にでも、生まれ育った「地元」があります。幼い頃は、なんてことない風景だったにも関わらず、大人になって離れると、とたんに愛おしく感じたりするものです。
そして地元には、常に生活の一部になっていた懐かしい味というものがあります。新潟県出身ならば誰もが知っている日本酒「吉乃川」は、寒い雪国の新潟を思わす、老舗酒蔵の銘酒です。
460年間、新潟県の銘酒の座を守る「吉乃川」
日本酒というと、高級で、舌が肥えていないと楽しめないお酒、というイメージかもしれません。
ですが、地元・新潟県では吉乃川はみんなが知っているお酒なうえに、そんなに値段も高くなく、贈り物として「吉乃川」を選ぶのはちょっと普通過ぎる……と懸念するほど、日常に根付いたものなのです。
「吉乃川」の醸造が始まったのは、遡ること約460年。戦国時代の頃から、新潟県産のお米と、地下から湧き出る信濃川の伏流水で仕込み、地元の味を守り、育んできたといいます。
「吉乃川株式会社」取締役 営業副本部長の峰政祐己さんは、地元で飲まれているというベースがあるからこそ、東京でも楽しんでもらえるのではといいます。
「値段もたいして高くないから、東京でも気軽に飲めるんです。でも安っぽい日本酒かというと、そうではない。歴史と地元の方の愛着があってこそ、東京で飲んだとき『新潟の日本酒って美味しいな』と思ってもらえる気がします。そういう意味で、吉乃川は他の日本酒とは違う位置づけなのかなと思いますよ」
「とりあえずビール」から「好きなものを飲む」世代へ
近年、お酒の消費量が減少し、若者がお酒を飲まなくなったと言われています。年齢層が広い飲み会の席では、「とりあえずみんなビールで!」というスタンスが通用せず、だんだんと「好きなものを自由に飲む」風潮が強くなってきているようです。
酒離れの波に呑まれ、日本酒を知らない若者が増えている一方で、好きなものを飲めるようになることで自分の好みのお酒を極めたいと思う若者も、出てきていると峰政さんはいいます。
「どんなにお酒を飲まないひとでも、ワインやビール、カクテルなんかは、一年に一回は必ず飲むタイミングが訪れるんです。ボジョレー解禁の時期とか、クリスマスとかね。でも日本酒って、そういう機会が無くてチャンスが少ないんです。だから飲まないひとは、飲まないまま歳を取る。
けれど、若いうちから日本酒の美味しさに気づくと、こだわりが生まれてどんどんいろんな日本酒に詳しくなる傾向にあります。こうした若者が増えてくれると、僕たちとしても嬉しいですね」
日本酒に触れる機会は、自分でチャレンジしようと思うか、日本酒好きなひととお酒の席を囲むのが近道です。特に後者の場合、美味しいものを教えてくれるため、新しい日本酒への扉が開けるかもしれません。
「日本酒は、飲むと背筋が伸びるお酒です。もし上司や目上のひとに日本酒を進められたら、チャレンジしてみてください。それで苦手なら、それでもいい。もしかしたら『あ、こんなに美味しかったんだ!』と気づくかもしれません。
逆に、日本酒が好きな先輩方にお願いしたいのは、うんちくを語りすぎないこと。この銘柄の酒は飲んだことあるのかとか、こんなのがおいしいと言っているうちはまだまだだとか言うのは、少しだけ待ってほしいんです。
入口は、ただ好き、ちょっとおいしいと思うことからで良いと思います。好きになれば自然と興味がわいてきますから。先輩も、悪気があるわけではないんですけどね(笑)。日本酒が好きという人が少ないから、気合が入りすぎちゃうのかもしれませんね。」
長年培われた技術と味への誇りは、今もなお「吉乃川」という名とともに、脈々と受け継がれているのです。
懐かしの地酒は大人の階段への第一歩
新潟出身の方々にとっては、懐かしの地酒。日本酒ビギナーの若者にとっては、日本酒をたしなむ大人への入口。新潟を飛び出した今でも、地域を問わず、いろいろなひとに、極上の一杯を届けている。
そんな、お酒です。
地元を想いながら、もしくは、いつもより少し背伸びした自分になりたいとき、「吉乃川」を一口、飲んでみてはいかがでしょうか。
お話をうかがった人
峰政 祐己(みねまさ ゆうき)
吉乃川株式会社 取締役 営業副本部長 兼 企画部長
1972年兵庫県西宮市生まれ 3歳から東京・千葉で育ち、新潟にはスキーで行ったことがあるという程度。マーケティング会社を経て、2005年より吉乃川に入社。外から見た新潟、吉乃川の良さを、広告宣伝や営業活動を通して、国内外の方々に伝えている。
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