都会にこそ自分がやりたい仕事がある──IKEUCHI ORGANICのデザイナーである松田加緒瑠さんは、3年前までこんなことを考えていたそうです。

外資系アパレル企業のデザイナーとして勤めていた4年間は、終電を逃してもかまわず働く日々。そんなある日、旅先で出会ったあるひとの言葉がきっかけで地元の今治市へUターン。テレビや雑誌で「今治タオル」が特集され、その名が全国でも知れわたった頃、松田さんはタオル業界の道を志します。

今治タオルのメーカーが100社以上もあるのはご存知でしょうか?

幾多ある企業のなかで、松田さんはIKEUCHI ORGANICに出会います。グラフィックデザインはもとより商品開発まで手がける松田さんが今治ではじめた、新しい挑戦。 彼女の姿は、地元で仕事をつくるという選択を教えてくれます。

松田さん

松田加緒瑠(まつだかおる)

今治市出身のデザイナー。専門学校卒業後大阪で4年間アパレルのデザインをした後、Uターンし2014年に入社。編み物の企画を担当。立ち上げからIKEUCHI ORGANICのKシリーズの商品開発をはじめ、グラフィックデザインをおこなう。同社のブランディングを担当しているD&Departmentとの窓口となり、ブランディングにも携わっている。好きなタオルはオーガニック120 。

今治の海

以下、松田加緒瑠

ある日、旅先で出会ったあるひとの言葉で、今治へ

大阪で勤めていた頃は定時で家に帰ることはなかったです、毎日。泊まりはなかったけど、終電を逃してタクシーで帰ることもよくあって。すごい激務だったんです。当時はいつも体調があまりよくありませんでした。

4年間勤めて区切りがついたタイミングで、仕事をやめることにしました。すぐに大阪で仕事を探しはじめたんですが、社会に疲れて、友達に会いにオーストラリアのメルボルンに行ったんです。

そこで友達が住んでいるシェアハウスに来ていたイタリア人の男の子に「なんで帰ってしまうの? 仕事をしていないならもっとこっちにいて、いろんなひとと会って、いろんなことを自由にしたらいいじゃないか」みたいなことを言われて。

その一言で、自分がやりたい仕事は都会にしかないと決めつけて、大阪で働くことにこだわっている意味は何なのか考えたんです。肩肘張らずに、ゼロから再スタートしたかった。

結局、転職活動で決まりかけていた会社を全部断って、今治の実家に帰ってくることにしました。失業手当をもらいながら今後のことを考えたらいいやって。

松田さん

今治に帰ってきたのは2014年ぐらい。その頃にはクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが今治タオルというブランドを確立してくれていました。都会でも今治タオルが高級に扱われているのを見て、「えっ!?」と思って。タオルは地元の誇りじゃないか、今治はかっこいいことをしているんだと気づいたんです。

The BeatlesとOasis好きの池内と出会う

転職活動中は、タオル業界のなかでデザインの仕事ができる会社を探しました。イケウチではない会社の求人案内を見ていたら、企画担当の業務内容に「フロッピーディスクにデータを焼く」って書いてあって。このご時世でフロッピー。いったい何をするんだろう? と思って。今思えばタオルの設計のことだったんですけど、当時は嫌な予感がして応募を辞めました(笑)。

IKEUCHI ORGANICは、私が入社する直前はブランドのリニューアル前で、「池内タオル」という社名でした。その求人には、「Illustrator、Photoshopが使えるひと、初心者OK、WEB担当者募集」だったんです。

文房具

これならいける! と思いました。

ホームページもちゃんと更新されている会社だったし、代表がThe BeatlesとOasisが好きだという理由で、応募を決めたんです。私はUKロックが好きなんですけど、もっと調べると代表も「UKロックが好き」ってどこかの記事に書いてあって、もう絶対にいいひとだなぁ、話してみたいなと思いました。面接を受けたら採用まで5ヶ月ぐらいかかりましたが、入社することになりました。

ベビーの新シリーズ立ち上げへ

私が入社してたった数ヶ月で「IKEUCHI ORGANIC」に社名が変更しました。ブランドリニューアルと同じ時期に、無縫製の赤ちゃんの産着をつくろうと代表が決めて、編み機を導入したんです。

面接の途中段階で私がその商品開発を担当するって決められていたみたいで。衝撃でしたね。Web担当と思って入社したのに、いきなり「赤ちゃんの産着の商品開発をしてね」って言われても(笑)。

松田さん

前職でニットの企画をやったことはあるんです。サンプルを買ってきてニットの企画会社のひとに「こんな柄でつくりたいんです」「2センチ幅を太くしてください」っていうのを相談したり。でも、まさか自分で赤・緑・黄色とか、番号だけのデータをつくることになるとは……。

今もわからないんですけど、当時は設計データなんて全然意味がわからなかった。転職前までは自分が企画して、業者さんと一緒になってやっていたことを、全部やらなきゃいけない状況になりました。

Illustratorの仕様書も存在しなくて、工程表もないし、各工程の担当者もざっくりとしか決まっていない。アパレルの一般的なプロセスとは全然違っているし、タオル業界の専門用語がわからない。

だから入社して「はい、赤ちゃんの無縫製の産着つくって!」って言われたときは、ゼロからのスタートすぎて絶望しました。それこそ社内の体制から、ゼロからのKシリーズ(ニットシリーズ)立ち上げだったんです。企画をして実際に販売する状態に至るまでは本当に大変。もちろん、今も大変ですけれど……(笑)。

matsuda (3 - 5)

代表の笑顔が見たいから

仕事が多くて大変で、辞めたいなぁって思うこともあります。けど、なんだか代表のためならやってあげようって思う(笑)。イケウチの一番好きなところは、代表。池内代表が好きです。

無茶振りがすごいんですよ。「いつまでに必要ですか?」って聞いたら、ニコニコしながら「今すぐだよ、見てわかんない?」とか「いつでもいいよー、早いほうがいいけど」とか、いつもそういう感じなんです。

けど、やってあげようと思うんです。入社したばかりの頃は、代表は偉いひとだし怒られたらいやだなぁと思って、身構えていたんですけど。実際は全然怒らないし話を聞いてくれるし、相談すればすぐ解決しようとしてくれます。ダメだって言われることはいっぱいあるんですけどね。

ネクタイをつくったら喜んでくれるし、「カタログできましたよー」って言ったら、すぐiPhoneで写真を撮ってFacebookにアップしてくれます(笑)。レスポンスも一番早いです。夜が遅くても、誰よりも早いですね。

気づいたらファンになっていて、代表の笑顔が見たいと思うようになりました。

松田さん

今治に帰ってくるまでは、地元にやりたいことはないかもしれないって思っていたけど、今はやりたいことがありすぎて困っています(笑)。

直近では産着づくりを進めるのが目標。グラフィックデザインの仕事のほうが忙しくて、それを言い訳にして産着(ベビーシリーズ)のほうに手を付けられなくなっていて。

商品開発もグラフィックデザインの仕事も両立して、どうやっていくかを考えながらやっていきたいです。

オーガニックベビー

松田さん

(この記事は、IKEUCHI ORGANIC株式会社と協働で製作する記事広告コンテンツです)

もしかしたら本当に、このタオルはいつか世界を変えるのかもしれない。【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】企業特集、はじめます。