2018年2月24日(土)、「小林市×下川町×十和田市×灯台もと暮らし これからの暮らしと地域を考えよう。人と食がつなぐローカルライフ」を開催しました。
灯台もと暮らしが、立ち上げ当初から力を入れてきた「地域特集」。
これまで地域特集をつくるために編集部が訪れた地域の中でも、特に足を運んだ回数が多いのが【宮崎県小林市】、【北海道下川町】、【青森県十和田市】です。
今回はこの3地域が新御茶ノ水のレンタルキッチンスペース「Patia(パティア)」に大集合して、新しい形の移住相談会を開催しました。
移住する目的は、なくていい
当日は2つのトークセッションと、移住・暮らし相談会の2部構成。
前半のトークセッション「これからの暮らしと地域を考えよう」では、20代の移住予備軍、灯台もと暮らし編集部のタクロコマ・おぎゆかがモデレーターを務めました。
小松﨑 拓郎(タクロコマ)
茨城県生まれ。灯台もと暮らしの編集者/フォトグラファー。
荻原 由佳(おぎゆか)
長野県生まれ、埼玉県育ち。灯台もと暮らしではデザイナー/アートディレクターを担当。
タクロコマ これからの結婚生活や子育てについて考えてみたときに、地元に帰るのか新しい土地に行くのか悩んでいたので、「じゃあ先輩に聞いてみよう!」と思い立ってミネシンゴさん・三根かよこさんのお二人にお声がけしました。
- 参考:【夫婦対談】出会い、暮らし、一緒に仕事もするふたり。逗子の夫婦出版社「アタシ社」|前編
- 参考:【夫婦対談】美容文藝誌「髪とアタシ」で自分のアイデンティティを世に表現する。逗子の夫婦出版社「アタシ社」|後編
タクロコマ なぜ、以前住まれていた逗子から三崎に移住されたんですか?
ミネ シンゴ(みね しんご)
神奈川県生まれ。夫婦出版社アタシ社の代表/編集者。美容文藝誌『髪とアタシ』を創刊し、独立。渋谷発のメンズヘアカルチャーマガジン『S.B.Y』の編集長も務める。8年住んだ逗子から三浦半島最南端の三崎に引っ越し、アタシ社の蔵書室「本と屯」を三崎の商店街で2017年12月にオープン。
三根 かよこ(みね かよこ)
千葉県生まれ。夫婦出版社アタシ社のデザイナー。哲学や仏教、国際協力などの視点を絡ませた、30代のための社会文芸誌『たたみかた』編集長。
ミネ 移住というより引っ越しの感覚なんですけど、逗子に8年住んで正直そろそろ新しい場所に移りたくなってきたんです(笑)。
あとは逗子だと東京で遅くまで仕事できちゃうんですけど、自分自身をすり減らしている感覚があって。自分の時間を増やしたかったんですよね。三崎に移ってからは内省できる時間が増えて、今のほうが圧倒的に気持ちいいなって思います。
かよこ 東京が大好きだし、仕事で東京に行くこともよくある。そんな私たちが東京と気持ちよく付き合える距離感をずっと探っていて、たまたま出会えたベストポジションが三崎だったんです。
自分のベストポジションってひとによって違うから、自分の心地よさに耳を澄ましていなければ、どこにいても自分を消耗してしまうんじゃないかな。
おぎゆか 自分の心地よさを「守る」目的とは別に、三崎への移住に地域で新しいことを始めようという「攻め」の目的はありましたか?
ミネ 正直、ないですね。事務所を無料で解放している蔵書室「本と屯」のはじまりは、僕たちの数千冊の蔵書を広げてみたらおもしろそうだよねって二人で話したこと。
明日は『本と屯』、お昼過ぎから営業する予定です。神奈川の三崎港に美味しい野菜や魚を買いがてら遊びにきてくださいな🐟#本と屯 pic.twitter.com/6xcIFtti8l
— 本と屯 (@hontotamuro) January 2, 2018
ミネ だから「ここの目的はなに?」って聞かれても「無目的です」って答えていたんです。
でもそうやって始めてみたら、三崎には図書館がないからたくさんの子どもたちが本を読みに来たり、近所の方がいい本を寄贈してくれるようになったり。
かよこ そういうことって予測できないんですよね。
私たちが引っ越してきたとき、三崎のひとたちがすごく歓迎してくれたんです。そうやって頼られると、じゃあちょっとがんばろうかなって思えちゃう(笑)。
ただ、あくまでも住んでみて愛着が湧いたから三崎のために何かしたいなって思ったので、地域のために何かしたいって思えるには多少時間が必要だなって感じます。
ミネ だから僕としては、移住する前から「移住したらこういうことがしたい」って目的意識があったわけではなくて。自分にとっての心地よい環境を求めて移住して、周囲との関係性を築いていく中でアクションしてみたら、予測していなかった物語が動き出した。今では三崎ですごくリラックスできていて、「ふるさと、ここにあったー!」って。
かよこ もちろん、ローカルに行けば全て解決するわけじゃないですよね。どの地域にも歴史や記憶の蓄積があって、ビオトープのようにその中での生態系ができあがっている。そこに外からやってきた自分たちが参加するためには、地域のひとの気持ちをできるだけ汲んだ上でどうやってドアをノックしていくか考えるようにしています。
東京から引っ越して、ここ10年でどんどん南下していった。ついに三崎というどん詰まりのとこまで来て、これが終着点か、と思った。けど、港町にいると、ここが出発点なんだ、となんの根拠もなく思ってしまう。そして、勇気が湧くんだ。 pic.twitter.com/HSli6DCAyC
— ミネシンゴ《髪とアタシ》 (@mineshingo) March 18, 2018
移住先に仕事はあるの?
後半のトークセッション「その地域ではどんな暮らしができる?移住の本音」では、灯台もと暮らし代表の鳥井がモデレーターを務め、【宮崎県小林市】【北海道下川町】【青森県十和田市】の各地域のキーマンから「住まい」「仕事」「地域コミュニティ」に関する本音を引き出しました。
- 参考:地元を愛する心意気に惚れ込んで【宮崎県小林市】特集、はじめます。
- 参考:一人ひとりが歴史を紡ぐ風を生む【北海道下川町】特集、暮らしながら始めます。
- 参考:きっとあなたも夢中になる。”好き”が探求できる、大自然とアートの街へ【青森県十和田市】特集、はじめます。
鳥井 弘文(とりい ひろふみ)
北海道函館市生まれ。ブログ「隠居系男子」、ウェブメディア「灯台もと暮らし」を運営している株式会社Wasei代表。
鳥井 移住を検討している多くのひとにとってネックになるのが、「仕事」だと思います。実際のところ、移住先に仕事があるのか?という質問に対して、いかがでしょうか。
柚木脇 大輔(ゆきわき だいすけ)
宮崎県小林市役所のプロモーション部門に在籍。宮崎県小林市生まれ。大学進学のために福岡に出た後、2002年に小林市役所に入庁して複数の部門に在籍。2015年に手がけたPR動画「ンダモシタン小林」が有名になり、講演会への登壇が増加。
柚木脇 仕事があるかないかで言ったら、ある。でもそのひとに合う仕事があるかどうかはわからない、というのが本音ですね。どうしても求人に偏りがあるので、選択肢が東京ほど多いとは言えない。
だから移住する前にその地域に何回も足を運ぶくらいの気持ちで、どんなライフスタイルで何を大切にしながらそこで暮らしたいのかを考えて、その上で住む場所や仕事を決めるのがいいんじゃないかなって思います。
立崎 朱里(たちざき あかり)
十和田市役所の地方創生・婚活支援係。青森県十和田市生まれ。大学進学のために仙台に出た後、2013年に十和田市役所入庁。実家は十和田市郊外で農家を営む。
立崎 十和田市も小林市と同じく、土木や介護の求人が比較的多い印象ですね。
あとは最近は、アート関係や自然に関わるネイチャーガイドといった、自分が好きなことを探求する場所を求めて移住してくるひとが増えている傾向が見られます。
鳥井 基本的には、今すでに地域に存在している職種の担い手が求められているんですね。
じゃあ、東京で数年間働いて身につけた腕に覚えがある技術、例えばPRやデザインといった専門的な仕事を地域に持ち込んだとき、職業として成立するんでしょうか?
長田 拓(ながた たく)
株式会社道銀地域総合研究所 地域戦略研究部に所属し、下川町産業活性化支援機構 タウンプロモーション推進部に出向中。ドイツ生まれ、大阪育ち。都内から札幌に移住し、2013年に下川町へ。
長田 私自身の体験をお話すると、都内にいた頃に携わっていた街のブランディングやプロモーションの仕事を地域でもやってみたいと思って移住しました。
でも下川町に入った当初は、そういった専門的な仕事が存在していなくて、説明しても地域ではあまりピンときていなかったようなんです。そこから、こういう仕事なんです、この仕事によって地域にこんなメリットがあるんです、って役場の方に説明し続けて、ようやく少しずつ理解してもらえるようになるまでに、僕は2年かかりました。
都会でキャリアを積みかさねて地域に入ったとしても、まずは基本的な挨拶や言葉の選び方を見られるし、地道にその地域と関わりつづけて地域の一員として認めてもらえないと、地域にとっての新しい仕事の意義が理解してもらえない、というのが実情です。
柚木脇 小林市では、東京のデザイン事務所で勤めた後に小林市にやってきた地域おこし協力隊の隊員が、任期を終えてからそのまま小林市でデザイン事務所を立ち上げました。
柚木脇 現在は、移住前のつながりをきっかけに依頼される東京の仕事と、移住してから依頼されるようになったパッケージやポスターといった小林市での仕事を両方やっています。地域にとってデザインは必要とされている技術なので、「すごく来てよかった」と言っていましたね。
立崎 十和田市でも、たまたま舞い込んだ一つの仕事をきっかけに、十和田市でのデザインの仕事を広げられたグラフィックデザイナーの方がいらっしゃいます。
立崎 確かに仕事のきっかけをつかむまでには時間がかかるかもしれないけれど、その仕事が地域に役に立つことを知ってもらえたら、一気に活躍の幅が広がっていくんじゃないかなって思っています。
柚木脇 だからどんな仕事をするにしろ、地域に馴染んでやっていくんだっていう姿勢が重要ですね。
これは地域コミュニティとの関わり方にも同じことが言えて、じつは地域こそ忙しいと言えるかもしれない。私は地域の消防団の部長をやっていて、さらにPTAや自治体の活動に参加すると、いよいよプライベートの時間がなくなります(笑)。
そういう仕事とプライベートの境目のない生活を楽しめるひとのほうが、地域で暮らしやすいんじゃないでしょうか。
長田 地域のコミュニティでいうと、北海道は本州に比べて歴史が浅いからか、コミュニティのつながりの強さが異なるように感じますね。下川町も町内会ごとの集まりはありますが、任意参加です。
たとえば、僕は仕事でお世話になったことがきっかけで、2年前に消防団に入りました。そういう活動に参加することで新しい情報を知る機会が増えたり野菜をもらえるようになったり(笑)、地域の一員として認めてもらいやすくなるのは確かですね。
鳥井 自分が地域で何をしたいか、どう暮らしていきたいかによっては、主体的に地域コミュニティに参加して、自分からギブしていく精神を持つことも必要になるんですね。
トークセッションのあとは移住・暮らし相談会&食事会
もとくら移住イベントでした!私たちはミネさんご夫婦に地域暮らしのリアルを。「目的を持っていかなくていい」「人は誰かの為になりたい」など心に刺さる名言が数多く聞けました。2部の3地域のトークではお金や住居や仕事などリアルなお話聞けました。 #灯台もと暮らし pic.twitter.com/F41JMrU1Op
— 荻原 由佳 / おぎゆか (@ogiyk_) February 24, 2018
イベントの感想(ツイッターより)
自分の人生大好きマンなので、好きな人はいても憧れの人はいなかった。でも、昨日、ミネ夫妻を知って、初めて「ああ、こうなりたい!」って強く思った。やっとロールモデルに出会えた。自分が欲しい未来が見えてきた気がする。そんな大収穫で、すごいいいイベント・時間だったなあ。#灯台もと暮らし https://t.co/194vIAnIUG
— のんちゃん@PR/まるも店長 (@robotenglish) February 24, 2018
ミネ夫妻の移住(引っ越し)みたいな東京との距離の取り方が理想だなって思った。
どのゲストもお金のことをしっかり言ってて綺麗事だけじゃない地域を語ってていいイベントでした。あと、美味しい料理とお酒があるってイベントとして大事!笑#灯台もと暮らし pic.twitter.com/hjc7ou4XNd— ナガサワケンタ (@ken76a3) February 24, 2018
「また来たいと思って、何度も来てくれると嬉しい。」地域がこんな想いで待っていてくれることを初めて知った。
移住して!して!っていうよりも、街のことを知って欲しいっていう想いに出会えて、遠かった日本がやっと近くなった。#灯台もと暮らし— カタヤマ ハルカ (@ka07807697) February 24, 2018
「人間やっぱり誰かの役に立ちたいから」。すごく分かる。私がこの2〜3年で変わったのはそこだと思う。私のためによりも、誰かのために。これは綺麗ごとじゃなくて、ほんとにほんとにそう思うの。じゃなきゃ長く生きていけない気もしてる。好きだと思える事で誰かの役に立てたらいいな #灯台もと暮らし pic.twitter.com/R2hhFSzsAh
— 伊佐 知美 (@tomomi_isa) February 24, 2018
(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)
文・写真/菊池百合子
編集/小松﨑拓郎(タクロコマ)
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