東京の浅草駅A5出口を出てから徒歩1分、春ともなれば桜が咲き誇り、観光客で溢れる「助六夢通り」に、2015年3月にオープンした「SUKE6 DINER(スケロクダイナー)」。
元靴問屋のビルを改装し、1階と2階を食堂「SUKE6 DINER」として、そして3階部分を併設したベーカリー工房「Manufacture(マニファクチュア)」として営業しています。
運営は「麹町カフェ」「ファクトリー」などの人気店を手がける株式会社エピエリ。彼らが謳うコンセプトの「EAT GOOD」とは? そして、国籍や年齢、性別を超え、シチュエーションを問わず人が集う「SUKE6 DINER」の人気の秘密とは?
店舗立ち上げ時から「SUKE6 DINER」を見守ってきた店員の小林優太さんに、お店のこだわりと目指すところを聞きました。
ブルックリンに似た浅草に魅力を感じて
── まず、お店立ち上げの経緯について教えていただけますか?
小林優太(以下、小林) もともと「ファクトリー」というパン屋で、小売のほかに、パンの卸の事業をしていました。最初は口コミ経由のお客さんだけで小規模に行っていたのですが、ありがたいことに徐々に取り扱う量が増え、ついにはパン工房を24時間稼働させても追いつかず、キャパオーバーになってしまって。
そこで、数年前に「別の場所に卸専門のパン工房を設けようか」という話が持ち上がったのが最初です。
── 浅草を選んだ理由は何かありますか?
小林 最初から浅草を考えていたわけではなく、いろいろと物件を見させていただいた中で、浅草がモノづくりの街として栄えてきたことに気が付いてから、考えだした、という方が近いですね。
浅草は、昔から小さくてもこだわりを持った作り手さんが多く暮らしてきた、モノづくりの街です。僕たちも、イチからモノづくり、パンづくりをしながら食事の時間を考えたり、農園を持ったりと展開してきたので、浅草という土地は相性がいいな、と感じました。
小林 あとは、僕もオーナーも、ニューヨークのブルックリンに行ったことがあって、もともとそこまで評価されていなかった土地が、時を経て少しずつ注目される場所になってきたのをこの目で見てきました。
おこがましいかもしれないけれど、この浅草がいつかブルックリンのような発展をしていくときに、僕らのお店が起爆剤の役割を担ってくれたらという願いを込めて、この花川戸という街を選びました。
誰もが心地よく過ごせる空間を作りたい
── 「SUKE6 DINER」には、日本人はもちろん、訪日外国人観光客の方も多く足を運んでいます。店内にはたくさんの国籍の方がいて、まるで浅草の観光客の縮図のような印象です。
小林 ありがたいことですね。客層としては、6割が日本人、4割くらいが外国人の方でしょうか。
── もともと、訪日外国人観光客の方の来店は、意識されていたんですか?
小林 いえ、意識していませんでした。というよりも、僕たちのモットーは「EAT GOOD」で、よいものを食べましょう、というところ。
僕たちの考えるよいものとは、奥さんや子どもなど自分が大切な人に食べてもらいたい料理を、お客様にも提供したいという想いが根底にあります。
早い、安い、美味しい、便利。効率や簡単さを求めた結果、今の世の中は便利になりましたが、そういった中で何か大切なことを忘れてきてしまったのではないか。僕たちは、「限りなく手作りできるものを出そう。食材は妥協せずに選ぼう」という根っこの部分の想いを大切にしながら、適正なものを、適正な価格で提供することに日々尽力しています。
その対象としては国籍も年齢も性別も、区別はしていなくて、むしろすべての人に同じように食事を提供したいと思っています。だから、特に訪日外国人観光客の方をターゲットに店作りをした、という意識があるわけではないんです。
小林 ただ、浅草という立地を考えた時に、外国人の方の来店はもちろん想定はしていました。
自分が海外を旅した時って、朝昼晩、すべての食事が規則正しく食べられるわけでありませんし、食べたいわけでもありません。
朝、ゆっくり起きて散歩をして、少し観光をしたあとに、ブランチが食べたくなる日もありますし、夕暮れを見てから、少し何かをつまみながらその土地の暮らしに溶け込むようにビールが飲みたい時だってあります。
その人にとって一番心地よい状態で食事を楽しんでいただきたいので、「SUKE6 DINER」の営業時間は、平日が朝10時から夜23時まで、休日は朝8時からとできるだけ長い時間営業するようにしています。特に休日の場合は、ランチの時間やディナーの時間を厳密に設けてはいないので、体調や気分によっていつでもいろんな食事が楽しめます。
ダイナーと名付けた通り、誰にとっても気軽な食堂でありたいので、メニューやSNS発信などの言語はすべて日本語と英語の併記。その意味では、たしかに訪日外国人観光客の方を意識していると言えるかもしれませんが、誰にとっても居心地のよい空間にしたいという想いの方が、先ですね。
── 日本人と、外国人の方で、何かお店に対する反応に違いはありますか?
小林 うーん、そんなにないと思いますね。
あ、でも、週末ブランチのメニューの頼み方や楽しみ方は、日本人の方よりも、外国人の方がうまいなぁって僕たちが関心することはあります。
── どういうことでしょう?
小林 うちは、週末限定で、パンと卵を組み合わせて頼めるブランチメニューを用意しています。クロワッサンやトーストなど、パンの種類を選んで、焼き方を指定して、あとは卵をいくつ、スクランブルエッグにするとか、ゆでたまごにするとか、選んでもらってワンプレートで提供するもの。
外国人の方、特にアメリカからいらっしゃる方は、このプレートの頼み方がうまいですよね。日本人の方は、セレクトするものよりも、すでにワンプレートで出来上がっているものを注文されることの方が、多い。
── なるほど、他には何かありますか?
小林 ほかは、外国人の方はリピートする方が多い、ということでしょうか。
一度気に入っていただけると、例えば1週間の滞在中は毎日、それも朝晩で通っていただけることなどもあります。朝、起きて出かける前にコーヒーを飲んで、夜観光を終えてホテルに戻る前に、食事と一杯のビールを楽しみに来てくださって、そして「また明日くるよ」と言って帰る、というような。
あとは、ベジタリアンの方や、ヴィーガンの方向けの食事も多くあるので、そういった方に好んで通っていただく傾向は、ありますかね。
── でも、基本的には日本人・外国人問わず、同じように接していらっしゃるんですね。
小林 日本人の方も外国人の方も、同じお客様ですから。国籍もそうですし、べビーカーを引いた方や、車いすの方も違いはありません。本当にすべての人に、同じように楽しんでもらえる空間作りをしたいですね。
街に愛され受け入れられるお店を目指して。進化を続ける「SUKE6 DINER」
── これから、お店として挑戦したいことは、何かありますか?
小林 ……外国人のスタッフを増やしたいですね。
「SUKE6 DINER」には、トルコ人のスタッフが1名いるのですが、外国人の方の対応をもっと充実させたいなぁとは思っています。
基本的には片言の英語でも対応はできるのですが、先ほど申し上げたように、リピーターになってくださる訪日外国人観光客の方の中には、このお店を起点にして観光をしよう、と思ってくださる方も少なくありません。
そうすると、観光のご案内なんかもしたくなりますし、会話ももっとしたくなります。そういったときに、僕たち日本人スタッフの語学力だと、少し物足りないこともありますから(笑)。
あとは、浅草の街に受け入れてもらって、もっと日常に溶け込んだお店になるように、日々精進していきたいですね。最近では、若い方や訪日外国人観光客の方だけでなく、「浅草一丁目会」みたいな、地元の高齢の方の集まりにこのお店の予約をとっていただけることも増えました。
1階はカウンター席もありますが、2階はソファ席や少人数さま向けのテーブル席もあるので、食事のほか、ちょっとした打ち合わせなどにももっと使っていただけるようになるとうれしいです。
── ありがとうございます。居心地がよくて、つい長居したくなる雰囲気を持ったお店です。
焼きたてのパンの香りや、挽きたてのコーヒーの香り、交わされる複数の言語や、子どもの声。いろいろな要素や音がBGMとなって、異国に旅しに来たような気分になります。またぜひ、お邪魔させてください。
小林 ぜひ。お待ちしていますね。今日はありがとうございました。
(一部写真提供:SUKE6 DINER)
お話をうかがった人
小林 優太(こばやし ゆうた)
東京都出身。大学卒業後、グローバルダイニングへ入社。飲食業の面白さに目覚め、その後、松浦に誘われ2009年エピエリへ入社。麹町カフェ、Chiliparlor9の店長を経て現在は店舗統括マネージャー。
このお店のこと
SUKE6 DINER
住所:東京都台東区 花川戸1-11-1 あゆみビル1階~3階
電話番号:03-5830-3367
営業時間:火~金曜日 10:00~23:00(ランチタイム:10:00~17:00)
/土日・祝日 8:00~22:00
定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
最寄駅:東京メトロ銀座線、都営浅草線「浅草駅」
公式サイトはこちら
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