西荻窪のこけしと紅茶のお店「西荻イトチ」の伊藤さんから、こけしをご紹介いただくコーナー。今日は、伊藤さんが「この形がとても好き!」と仰る鳴子こけしをご紹介です。
■細く長く好きでいて。紅茶とこけしのお店「西荻イトチ」の伊藤ちえさんの想い
体育座りをしているような鳴子こけし
こけしといったら宮城県の鳴子こけしを思い浮かべる方は少なくないと思います。いわゆる、こけしの定番と言われているものです。そのなかでもこの形は、鳴子こけしだけ作られる形で「ねまりこ」と言うそうです。
「鳴子こけしの中にも形がいろいろあります。おおまかに言うと台形のぼってりした形のものがねまりこです。私はこの形が好きなんです。体育座りをしている感じのフォルムだし、高さかな。安定感があってバランスがとれていて、たっぷりしている感じがいいですね。」
確かにこけしは細長い円筒形の胴体を持っているイメージが強いです。三角形のフォルムのこの鳴子こけしは、サイズはそこまで大きくありませんが、心なしか存在感があります。
この鳴子こけしは、早坂利成さんという工人さんが作っていらっしゃいます。鳴子温泉街には、たくさん工人さんのお店があり、その中に早坂さんのお店もあるそうです。
伊藤さんが早坂さんと出会ったのは、早坂さんが宮城から関東に出て来てお話をするようになったのがきっかけだそうです。
「最初は、少し話しかけづらかったんですけど、こけしのことを聞いたりすると、いろいろなことを教えてくださって。50代の方で、描彩もそうですが木地に対しては特に勉強熱心な方で、木地に関することは本当にいろいろ教えていただきました。」
また、早坂さんは、鳴子で唯一足踏みろくろを継承されている方だそうです。足で踏んでろくろを回す作り方で、足腰を使うため大変な作業です。今では電動式のものが主流で、足踏みろくろを使ってこけしを作れる方は早坂さんだけだと言います。
鳴子温泉街は、こけしに親しみがない人でも自然と目に入るほど、こけしが身近に感じられる場所のひとつです。もともと温泉街のお土産品として発展してきたこけしですが、「ねまりこ」の形は疲れを癒しにきたお客が、温泉に浸かってくつろいでいる様子にも見えてきます。
「たっぷりした形」という伊藤さんの表現が、あまりにもこのこけしに似合っていて、鳴子こけしを自分で買うときは「ねまりこ」にしよう、と思うのでした。
お店の情報
西荻イトチ
住所:東京都杉並区西荻北2-1-7
電話番号:03-5303-5663
定休日:月曜日 ※臨時休業あり
公式HP:http://tea-kokeshi.jp/
津軽こけし
工人名:早坂利成
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