日本全国、どの土地を訪れても巡り会う、その地域でつくられたお茶。コーヒーも好きだけど、お茶を淹れて飲む暮らしもしたい。そんな思いを抱いたことから、編集部・タクロコマがおいしいお茶を紹介する「今日の一服」。
戦国大名が楽しんでいた茶事──立てられたのは「抹茶」。千利休らの尽力によって、室町時代から一大ムーブメントを起こし、ブランド化したお茶です。
現在でも、お金を払ってお茶を飲むといえば、抹茶が思い浮かびませんか?
抹茶とおなじ「ハレ」の飲みものでありながら、フォーマルなものとしての知名度が低いのが「煎茶」です。
それもそのはず、日本で最も一般的なお茶で、消費量の約7割を占める種。
歴史上でも“今がいちばんおいしい”とされるこの飲みものは、日本が大陸から取り入れ研鑽させてきた文化の結晶。
裏を返せば、これから世界中の人々に注目される可能性を秘めているお茶です。
今回ご紹介したいのは、東京メトロの明治神宮前駅・表参道駅から徒歩5分の場所に位置する、日本茶専門カフェ「表参道 茶茶の間」。
迎えてくれたのは、店主で日本茶ソムリエの和多田喜さん。大学卒業後に日本茶カフェをつくったのは、あるきっかけがあるといいます。
「自分が好きなアニメの主人公が飲んでいたので、幼い頃から中国茶や和紅茶が好きでした。
中国茶と紅茶を勉強してそれなりに自分で楽しめるようになった時に、あらためて日本茶のことを考え、ふと気づいたんです。
自分はおいしい日本茶をまったく知らないし、飲んだこともない。
そこで興味を持って、広尾にあった日本茶カフェでお茶を飲んだ時に感動しまして。
同時においしいお茶を飲めるところがないとも感じて、だったら自分でそういう場所をつくりたいなと」
お茶の店をつくると決め、「やる」と公言してから、さまざまなご縁がつながり今に至ったといいます。
今回淹れていただいた「秋津島」という煎茶は、和多田さんが「人生を変えさせられた」と言うほど、この世界にのめり込むきっかけになったお茶です。
「どうぞ召し上がってください」
すごい──。思わず言葉に出てしまうほど、口に含むだけで甘くて深い香りとコクが、じゅわーっと広がるほど濃厚な味わいです。
濃く淹れたコーヒーをデミタスカップに入れて、ちびちび飲むことを喫茶する、と言いますが、まさにお茶を喫するという体験でした。
もともと喫茶というお茶の楽しみ方があり、それに準じてコーヒーを淹れたことから、喫茶店が広まっていったんです。
店内には秋津島が育つ茶畑の、大きな風景画が飾られています。
「初めて茶畑に行った時に、このお茶を自分が広めなかったら、誰がやるんだって思えたくらい……この光景に感動したんです」と和多田さん。
年間でわずか約150キロしか生産されない秋津島。茶畑は標高800mの山の中腹にあります。
いわゆる日常茶飯事と言われてきたお茶と、戦国大名たちがおこなってきた、特別な茶事。お茶を楽しむという行為は、大きくこの二つに分けられます。
誰しもが日常的に飲む「ケ」のお茶は、今でいうペットボトルのもの。
今回いただいた緑茶は、特別な茶事で飲む「ハレ」のお茶。急須でお茶を淹れられるということは、過去には家の暮らしが豊かになった証でもありました。
もとは特別な日に、特別なひとに、特別な思いで贈る、大切な贈り物だったのが緑茶です。
春はめでたい季節です。良き機会にどうぞ。
(文・写真/タクロコマ)
このお茶について
秋津島(あきつしま)
茶葉によい環境を求め標高800mの高地で栽培することにより、最高の新芽を育て、その新芽を壊すことなくお茶に仕上げる。自然と人とが作り上げた奇跡のようなお茶です。しっかりとしたお茶の渋み、またそれを優しく包み込むような深い甘み。そして最後に茶畑の香りが口に広がるような清々しさ。全て今までに知っているお茶の味や香りであるのに、洗練された上質な味わいと絶妙なバランスを楽しめます。
引用:秋津島/表参道 茶茶の間
このお店のこと
表参道 茶茶の間
住所:渋谷区神宮前5-13-14
アクセス:東京メトロ明治神宮前駅から徒歩5分
東京メトロ表参道駅から徒歩7分
JR 山手線原宿駅から徒歩7分
営業時間:11:00〜19:00(LO 18:00)
定休日:月曜日、第2火曜日
(月曜日が祝日の際は翌火曜、第2火曜が祝日の際は第3火曜)
公式サイトはこちら。公式Facebookはこちら
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