「移住」を一度でも考えたことのある皆さん! 全国の成功例も失敗例もつぶさに取材してきたジャーナリストの2人が、「女性の移住」をテーマに、特別対談を開催します。

そんな謳い文句で告知を開始した、以下のイベント。

移住ナイト

登壇したのは、ソーシャル&エコ・マガジン『ソトコト』編集長の指出一正さんと、『灯台もと暮らし』編集長であり、この記事を書いている伊佐知美。

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

「移住したいと思ったら、どうしたらいい?」「地域にとけこむ秘訣は?」そんなベーシックな話から、ちょっと上級者向けのアドバイスまで、終始和気あいあいとした雰囲気で進行された素敵なイベントになったのではないかと思っています。

イベント終了後、運営スタッフが「来場者同士で友情が生まれるイベントなんて、はじめて」と呟いていたのが、じつは私が一番うれしかったことなんですけれど、ね。仲間が見つかるって、移住において結構大切だと思っているから。

イベントは大きく3部構成!

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

  1. 自己紹介
  2. 指出一正×伊佐知美の「移住ナイトトーク」
  3. フード・ケータリング「MOMOE」さんのごはんをいただきながらの懇親会&サイン会

まず新潮社の『移住女子』担当編集者の川端さんから、イベント開始の挨拶を。

「移住ナイトトーク」では、指出さんと伊佐の自己紹介、指出さんからの移住の成功モデルの紹介。次いで伊佐から指出さんへの質問、会場から2人への質問……と、限られた60分という時間ながら、内容盛りだくさん。

トーク終了後は懇親会を行いつつ、並行してサイン会を実施しました。

以下では、「移住ナイトトーク」でお話した内容をチラ見せします!

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

移住した女性のモデルケースは?

指出 宮城県気仙沼市の唐桑(からくわ)半島に移住した「Pen.turn女子」が素敵です。

伊佐 「Pen.turn女子」。指出さんの著書『ぼくらは地方で幸せを見つける ソトコト流ローカル再生論 (ポプラ新書) 』でも紹介されていた方々ですね。

Pen.turn女子
(画像引用:Pen.turn女子公式サイトより)

指出 今や移住の種類はUターン、Iターン、孫ターン、Jターンなどなど……いろいろありますけれども、Pen.turnのペンは「Peninsula(ペニンシュラ)」のペンですね。唐桑半島の「半島」です。

伊佐 まず名前からしてかっこいい。

指出 当然この名前は自分たちで付けています。自分たちで名前を付けて活動できるひとたちが、地域でおもしろいことをやっているというのが最近の事象のひとつだと感じます。

「Pen.turn女子」には、根岸えまさんという女性がいるんですが、彼女は立教大学の学生時代に3.11を経験して、ボランティアで唐桑半島に入った。そこで、どん底まで落ちたおじさんの背中を初めてみたそう。なかなか見ないですよね、どん底まで落ちた大人の姿ですよ、さめざめと泣くような。漁師の方だったそうです。

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

伊佐 ふむふむ。

指出 でも、彼らが「僕たちはここまで落ちたけれども、漁でもう一度上にあがろう」というようなことを、えまさんたちに言ってくれた。東京生まれ東京育ちのえまさんは、それを聞いて「同じ未来を見るんだったら、こういう大人たちと一緒がいいな」と思ったと。

そう考えた彼女たちを筆頭に、富山や兵庫、奈良などから移住してきた女性たち5名で結成されたユニットが「Pen.turn女子」です。

  • ■参考:根岸えまさんの移住に関するエピソード詳細はこちら

伊佐 具体的には、どんな活動を?

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

指出 役場の職員や教員の補助、バイオマスエネルギーの会社や一般社団法人のスタッフ。みんないろんな本業を持ちながら、唐桑半島の漁師のサポートやSNSを上手に使ったイベント運営などをプロボノ的にやっています。サイトもとてもきれいに作られていて、見ごたえがありますよ。

伊佐 私も一度お会いしたくなりました。

指出 あとは、新潟や長野に拠点を置く女性が営む「地層食堂」や、島根県江津市の古民家カフェ&ベーカリーの「蔵庭」もいい。ほんとにいろんな場所で、若い方々、特に女性が活躍されているのが今だと思います。

田舎に仕事はある?

指出 仕事は、ありあまるほどありますよ。移住前は不安に思うかもしれませんが、いざ地域に行ってみると「えっ、こんなにいろんな仕事があるんだ」「自分にもできることがありそう」と思えるので、安心してほしいですね。

ぼくは島根県のとある地域の偉いひとから、「神主にならないか」って言われたんだよね。

会場 (爆笑)

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

指出 「神主、なれるんですか?」と聞いたら「なれるなれる、神社空いてるからやってよ。酒もつくれるぞ」と。

伊佐 すごい話ですよね。でも全然ありえない話じゃない。そういえば私も、「この荒れ果てたみかん畑を復元しないか」と言われたこと、あります。

指出 それくらい、地域にはひとがいないんですね。だから「なんでもやります」って言ってみるのは、すごくいい。まずその第一声をいうと、地域のひとは喜んでくれる。

伊佐 なぜでしょう?

指出 ほんの些細なことでも地域では仕事になりうるから。「ちょっと運動会のビデオ撮ってよ」とか「メールのやり方教えて」とか。地元の方々だって、移住者がスーパーマンじゃないことくらい知ってる。ただ、できないことがあっても「なんでもやる」という姿勢はある。その心意気が伝わると、すごく地域では生きやすくなるんじゃないかなぁ。

伊佐 なるほど。

地域に仕事はありますよね。探し方に工夫が必要なだけで。東京でパソコンの前で求人情報を探してるだけじゃ、たどりつけない情報が地域にはあふれている。

私も取材を通して、移住女子のみなさんから「仕事情報が町内情報で流れることもある」「ネットでは見つからない仕事も、口コミだと見つかる」「季節労働だと働き手をいつも探している」など、いろいろな仕事のいろはを教えてもらいました。

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

指出 それらは決して、1つの仕事で月収20万円とか、30万円にはならないかもしれない。でも、月5万円とか8万円のビジネスにはなりうるので。

伊佐 可処分所得としては。

指出 そう、そんなに大差ない暮らしができるんですよね。あと、起業したいひとにももちろん地域は向いている。

伊佐 いわゆる副業ではない「複業」ですね。複数のなりわいを持つ生き方。

そもそもどこに移住したらいい?

伊佐 私なら、海が見える気候のいい場所、かなぁ。単純なので。

指出 自分の好きな友だちが先に移住しているようだったら、まずはそこに行ってみるといいですよ。理由は、自分の好きなひとが選んだ場所というのは、ながく揺らがない根拠になるから。

それは別にまねっこじゃない。たとえば下北沢が好きで下北沢に行くひとは、何千人いてもまねっこじゃないじゃないですか。

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

伊佐 たしかに。

指出 心の拠り所がある場所を、最初の移住候補先として見てみるのはよい方法だと思います。それでも見つからないなぁ、日本地図とにらめっこしても分からないなぁというひとは……。

伊佐 (ごくり……何だろう……?)

指出 東京でやっている地域・移住イベントに足を運ぶ。

伊佐 東京ほど地域のイベントをやっている町はないですもんね。

指出 日本で一番やっていますよ。今日のこの回もそうだし、ほかでもやっているし、明日もいっぱいやっている。で、奥出雲町とか塩尻市とか、あんまり馴染みのない場所のひとたちが直接出向いてくれていたりする。

そういうものを、うまく見つけるといいと思うんですね。その窓口のひとつが、清澄白河の「リトルトーキョー」でしょう。

リトルトーキョー
(画像引用:リトルトーキョー公式サイトより)

伊佐 『日本仕事百貨』を運営しているナカムラケンタさん主催の場ですね。

指出 昼はごはんが食べられるし、夜は定期的に「しごとバー」という誰かをマスターとして招いたイベントをやっています。一度行ってみるといいと思います。ひとりでも気軽に参加できますから。

「読めない漢字の町」に興味を持ってみるのはいかが?

指出 あと、これは余談というか。直感で思っていることなんですが、「読める漢字の町」よりも「これ読めないなぁ」っていう漢字の町のほうが、おもしろいことが起きてますね。

伊佐 簡単には読めない漢字ですか? 鹿児島県甑島(こしきしま)とか?

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

指出 そう! 神石高原とか。じんせきこうげん、と読むんだけどね、なかなか読めないですよね。そういう場所に行くと、まだまだ手つかずのおじさんとかおじいちゃんおばあちゃんとかが残ってて、すごくおもしろいなって。

伊佐・会場 手つかずって……(笑)。

指出 それは結構大事。そういう視点は。

伊佐 いや、的を射ている気がしました。たしかに言われてみると、馴染みのない町がおもしろいことをしているケースは多いかも。

指出 やっぱり「自分がいちばん最初に発見した感」って大切なんですよね。すでに述べた移住先の探し方で、「友だちを頼る」「イベントに足を運ぶ」とは別のアプローチがあるとしたら、「自分が見つけた町」なのかもしれない。

これはお気に入りの場所、お気に入りのカフェと同じ文脈だと思うんですね。みんな読める地域に行くので。

伊佐 鎌倉、京都、岡山、長野、とか。

指出 うんうん。もっと「読めない場所」に興味本位で行くと、思いもよらない出会いがあるかもよ。

伊佐 ウェブの編集者目線で補足すると、移住したらやっぱりブログとかSNSで情報発信したいじゃないですか。その場合も京都や鎌倉などの有名観光地だと、いくら頑張って発信してもGoogleなどの検索エンジンで上位表示されづらい。

会場 (うんうん、とうなづく)

伊佐 でも秋田県五城目町(ごじょうめまち)とか、三重県生琉里(ふるさと)などちょっとめずらしい土地の名前であれば、やりやすくなるのは事実。うーん、結構いい提案かもしれませんね。みんな、読めない町探し、してみましょう?(笑)。

お金は? 馴染み方は? デメリットは? 尽きない移住トーク

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

……さて。そのほかにも、「移住しようと思ったときの資金は100万円」「いや200円だけ握りしめて移住し、結婚までしたひとも」という話や、地域への馴染み方、具体的な移住先の地名を挙げての相談など、会場を交えてのトークは深まるばかり。

終始伊佐はご機嫌で、カメラマンの写真を確認しても、大口開けて爆笑しているものが大多数……楽しかったのでしょうね。

「移住トーク」終了後は、『灯台もと暮らし』ではすでにおなじみ「MOMOE」さんのごはんを食べながら懇親会とサイン会を実施しました。

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!
指出一正×伊佐知美の移住ナイト!
指出一正×伊佐知美の移住ナイト!
指出一正×伊佐知美の移住ナイト!
指出一正×伊佐知美の移住ナイト!
指出一正×伊佐知美の移住ナイト!

指出さんのお話は示唆に富んでおり、私も前のめりで聞いてしまいました。

参加してくださった方々、楽しんでいただけたでしょうか。

では名残惜しいのですが、すべて書き起こしてお伝えするとものすごい文字数になってしまうし、全部を聞けるのは会場に来てくださった方の特権ということで。この記事は、このあたりで一旦おしまい。

指出さん、新潮社のみなさん、ラカグの方、参加してくださった方々、改めて本当にありがとうございました! 現場からは、以上です〜!

指出一正×伊佐知美の移住ナイト!文・伊佐知美
写真・タクロコマ