「本がある暮らしがしたい」。そう思い描いた時、あなたの頭に浮かぶ本はどんなものですか。書籍、雑誌、それとも美しい写真集や料理本でしょうか?
2014年12月にオープンした湘南T-SITEは、湘南 蔦屋書店を中心に30の個性豊かなショップが集まる新しい文化複合施設です。綺麗でおしゃれ、それでいて五感を刺激してくれる書店に見る、これからの本との付き合い方とは。
それを体いっぱい感じるために、藤沢の地に出かけましょう。
湘南らしいライフスタイルを求めて藤沢へ
東京駅から藤沢駅までは、JR東海道本線に乗って50分ほどの道のりです。そこから更に、バスに乗って15分ほどでしょうか。海のある町ならではの開放的な空気に包まれて、どこか爽やかな印象を与える湘南T-SITEの外観です。
実はここは、藤沢市とパートナー企業が一体となって進める街づくりプロジェクト「FujisawaSST(藤沢サスティナブル・スマートタウン)」(*1)の街区内。
そのためか周囲は落ち着いた雰囲気で、暮らしの中に位置するお店だということが立地からも感じられる設計になっています。
(*1)「FujisawaSST」:先進的な取り組みを進めるパートナー企業と藤沢市の官民一体の共同プロジェクト。「100年先も生きるエネルギーが生まれる街」をコンセプトに、住居や商業施設、健康・福祉・教育施設、公園、街区などが整備されています。
建物は「趣味&ライフスタイル・テクノロジー」ENTERTAINMENTの1号館、「スローフード&スローライフ」FOOD/LIFEの2号館、そして「子どもと過ごす豊かな時間」FAMILY/Fujisawa SST SQUAREの3号館に分かれており、それら3つの建物が同じ敷地内に並んでいます。
本屋と個性豊かな30のショップがシームレスに繋がる新しい空間
まずは、暮らしがテーマの「スローフード&スローライフ」FOOD/LIFE 2号館をのぞいてみましょう。
建物に入ってまず驚くのが、お店の並び方。本が並んでいるかと思えば突然台所用品や洋服が現れ、本屋なのか、雑貨屋なのか、一目見ただけでは分かりません。
湘南T-SITEは代官山蔦屋書店の2号店としての位置付けでもあるため、もちろん本屋なのですが、テナントとして入っている30のお店の間にはすべて壁がないのです。
その上、電動アシスト自転車専門店「motovelo」のお店には蔦屋書店のアウトドアの本が、そしてライフスタイルショップ「CLASKA Gallery & Shop “DO”」のお店の中には蔦屋書店の暮らしの本が置かれているといった具合に、壁だけでなく商品そのものまでもが共有される仕組みになっています。
もちろんこれは個別の本のコーナーを見ても同様で、上記のように本の中に登場するお菓子を実際に一緒に売ったり、福岡県糸島郡のミツル醤油さんの売り場には『採れたて、糸島』という本が置いてあったりと、とにかく揃えてあるものすべてがこんな感じ。
1つひとつのお店を個別に見るというよりも、建物全体をひと繋がりのお店として楽しむといった方がもはや近いかもしれません。
ちなみにこれは2号館に限った話ではなく、1・3号館も同様です。
本とモノを分けることなく、同じ文脈の中で提案されていることに新鮮さを覚えつつも、「まぁ、そうだよな」と妙な納得感をいだきながら「湘南T-SITE」の敷地内を歩きます。
この空間は、新しいというよりも自然です。むしろ、最終的には「なぜ今まで本屋はこの形態をとってこなかったのか」と疑問すら抱いてしまいました。「本とモノ、暮らすことは何も切り離されたことではなくて、ひと繋がりの動作と思考の中で連携しているものなのだ……。」そんなことを考えながら店内を歩きます。
湘南T-SITEおすすめの本とは?
さて、2号館担当の加藤 真央(かとう まお)さんに、おすすめの本を尋ねてみました。
「おすすめの本はたくさんありますが、暮らしで言えばオーガニック料理の母と呼ばれる『アリス・ウォータース』さんの本はとてもよい本です。
彼女は世界にオーガニック農業やスローフードを普及させ た立役者と言われ、アメリカで最も予約が取れないと言われるオーガニック・レストラン『シェ・パニース』のオーナーシェフでもある。彼女の本には、これからの暮らしを考える過程で役に立つことがたくさん書いてあるのではないかと思います。
2号館では、一緒にペーストなどのオーガニックフードを販売していますので、本と一緒にご購入される方も多いですね。」
「また、私個人の思い入れがある本で言えば、『よりみちパン!セの男子のための人生のルール』でしょうか。
ひとは、男に生まれるのではない。男に『なる』のだ! 本物の『漢』になりたいすべての少年へおくる、最強の『人生のルール』。
私は女性ですが、男性に限らず生きる上で参考になることが詰まった本だと思います。この本は入社当時に先輩に贈り物としていただいた本で、その時に受けた感銘や衝撃は今でも鮮明に思い出せますね。何度でも繰り返し読みたくなります。この本は、3号館で取り扱っています。」
最後に
本とモノが有機的に繋がり、境目なく取り扱われている新しい文化複合施設の湘南T-SITE。そこは、目新しいコンセプトで作られたものではなく、むしろ原点回帰の懐かしさや、もとの暮らしを感じさせるヒントで溢れる空間でした。
本がある暮らしは、きっと特別なものではありません。誰もが体験しうる、自然なもの。気候がよくなる春の季節、少し時間ができたら湘南エリアに出かけませんか。きっとそこには、まだあなたの知らない本との出会いが待っているはずです。
お店の情報
湘南T-SITE
住所:神奈川県藤沢市辻堂元町6丁目20番-1
最寄駅:JR東海道本線藤沢駅
※湘南T-SITE⇔藤沢駅北口間で、コミュニティバスを運行(土日祝日限定)
電話番号:0466-31-1515
定休日:なし
営業時間:8:00~24:00
※店舗により営業時間・定休日が異なるので、詳細は各店舗情報をご覧ください。
公式HP:湘南T-SITE公式サイト