高知県嶺北地域・土佐町の暮らしを届ける「今日の一枚」。家族で移住した鳥山百合子さんが、巡る季節ごとに心待ちしているという、自然からの手紙。毎日みている風景のなかに、ある日突然「もも色」が加わるのだとか。
もも色の、ほわほわとした花。
近くで見ると、まるで、もも色の小さな花火のように見えます。これは、ねむの花。
「ねむの花が咲いたら、大豆のまきどきだよ」と近所のおばあちゃんが教えてくれました。そのことを知ってから、ねむの花が咲くと「大豆のたねをまかなければ」とそわそわしながら過ごし、たねをまき終わると、季節のしごとをひとつ終えた、とほっとするのです。この大豆でお味噌をつくります。大豆になる前の枝豆も楽しみのひとつです。
あ、あの道路の横にも、あの山のふもとにも。
土佐町の毎日みている風景のなかに、ある日、このもも色が加わります。すると、「あぁ、この木もねむの木だったのか」と気づくのです。
日付の入ったカレンダーではなく、この地にある花や木、空や風、山の色が「この季節がきましたよ」と教えてくれます。
それはまるで、自然からの手紙のようです。
忙しい毎日のなかでも、たしかに送られてくる「自然からの手紙」を開き、書かれているメッセージを心におきたいと思っています。