コーヒーとお酒。それ以外に毎日を楽しませてくれる飲み物が見つからないのなら、お茶を試してみることをおすすめします。

筆者である僕(タクロコマ)は、蔵前に店を構えるNAKAMURA TEA LIFE STOREを取材して以来、毎朝お茶を飲むようになりました。

朝起きたばかりのからっぽの胃を優しく包んでくれるお茶は、心をホッとさせてくれるだけではなく、味や香りを楽しめるのはもちろんのこと、仕事モードに気持ちを切り替えるために欠かせない存在でもあります。

今回ご協力いただいたのは、宮崎県小林市で製茶業を営む大出水拓磨さんです。

お茶の職人がどんな想いで、どのようなお茶をつくっているのか? はじめてちゃんと飲むなら、どんなお茶がおすすめなのか? 大出水さんに教えていただきました。

大出水琢磨さん

大出水 拓磨(おおいでみず たくま)

大出水製茶3代目。高校卒業後に「野菜茶業研究所」に研修生として入学。その後、山啓製茶株式会社で3年半流通や二次加工等に携わり、23歳の冬に小林市にUターン・継業した。

生産から焙煎までおこなう。こだわりの「深むし茶」

大出水製茶・深蒸し茶

宮崎県の南西部にある小林市で3代続けてお茶農家を営む「大出水製茶」では、茶葉の卸売に加えて「深むし茶」「粉末緑茶」を製作・販売しています。一般的な深むし茶は濃い緑色ですが、大出水製茶の色は薄め。強めに焙煎しているため、香ばしさが残り、甘みの強い味わいです。

深むし茶
大出水製茶・深むし茶

そもそも、静岡では焙煎が得意な会社で修行していたこともあり、拓磨さんのそれにかけるこだわりは人一倍。強めに焙煎している理由は、ご自身が一番感動したお茶の味に影響を受けているからだそうです。

「私が初めて静岡に行ったときに、父がお付き合いしていたお茶屋さんで飲んだお茶の味は、もう絶対忘れんですね。感動しましたよ、ええーっ!って。口に含んだ瞬間に清涼感のあるお茶の香りが鼻を通り抜けるというか……。それでいて甘いんです。普通は“渋い”味だって捉えるところなのに、お茶を飲んで甘いって感じるのは初めてだったので、その理想の味にどう近づけるかが、自分の目標です」

大出水琢磨さん

「もともと父も、どっちかというと強めに焙煎するほうだったんですけど、私が静岡で勤めている頃に、小林の茶葉を送ってもらって静岡で二次加工していました。一番茶に関してはそれを今も続けているんです。お茶を静岡に送ったら自分ひとりで静岡の会社に行って焙煎して、またそれを持って帰ってきます」

収穫した茶葉を乾燥させて「荒茶」にし、出荷するまでが一般的な農家の仕事です。しかし大出水製茶は焙煎までおこなう。そのこだわりには、編集部全員がびっくりしてしまいました。

焙煎とは、素材を活かしてよりおいしくする手段です。飲むひとが毎日飲みやすいようさまざまな試行錯誤をかさねた結果、「深蒸し」かつ「強めに焙煎にする」製茶法に至ったそうです。

大出水製茶

なお、大出水製茶では小売用の畑のほかに、JA宮崎経済連の市場に出荷する茶葉も栽培しています。

JA宮崎経済連とは:農家がお金を出し合って結成されている協同組合。持続可能な農業の実現を目指し、農業者の所得増大・農業生産の拡大・地域の活性化を基本目標としている。

3代続くお茶農家

大出水製茶は、拓磨さんで3代目。小林の高校を卒業し、家業を継ぐという前提で「野菜茶業研究所」というお茶の研究機関に研修生として入学し、2年間研修した後お茶の問屋である山啓製茶株式会社で3年半流通や二次加工などの仕事を務めます。その後、23歳の冬に小林にUターン・継業し、就農しました。

茶葉
緑色が映える茶木も継いだもの。父親の昭一さんが就農した頃に植えたもので既に30年以上経つ

「家業を継ぐ」と直感したのは、小学生の頃

高校卒業後から野菜茶業研究所に進学した拓磨さんですが、お茶の仕事をしようと決心したのは、何がきっかけだったのでしょうか。

「もともと祖父の代は共同工場(きょうどうこうば)で地域のひと同士が同じ機械を使って製茶していたんですが、私が小学校6年のときに父が個人の茶工場を建てました」

大出水製茶・工場
荒茶をつくる工場
大出水製茶・工場
生葉を刈り取って、茶工場に行って一次乾燥させ、「荒茶」にして出荷する

「近所のおじちゃんやおばちゃんからも『もう後継ぎやねぇ』とか、学校の家庭訪問でも『もう進路決まったねぇ』って言われていたので(笑)。まだ幼かったんですけど、自然に家業を継ぐのだろうという気持ちになっていきました」

拓磨さんが小林市にUターンして家業を継ぐ、その原点にはこのような経験があったようです。

現在は「市場で評価されるお茶づくり」を指針に、お茶摘みと製造を同時に進行させながら家族3人でお茶をつくっています。

お茶摘みは琢磨さん
お茶摘みは拓磨さんの仕事
茶畑にて
品質にバラつきが出ないように葉や芽の大きさ、畑の高さも揃える

茶畑にて

茶畑にて

摘み取った茶葉を工場に運ぶ
摘み取った茶葉を工場に運ぶのは母の知子さん

大出水製茶

大出水製茶
茶工場を動かしているのが父の昭一さんと拓磨さん

研究を重ね、農林水産大臣賞を受賞

大出水製茶・工場本場静岡での経験を活かし、家業を継いでからもお茶づくりの研究を重ねている大出水さんは、今や地元農家からも頼りにされる存在。地域の若手農家と切磋琢磨しながら地元を盛り上げていきたいといいます。

「20〜30代の若手農家が集まる小林SAPという団体で活動しています。活動内容は毎月の定例勉強会、プロジェクト活動、視察研修会、あとは地域や他産業者との交流。

その活動の中で、毎年ひとり1つ自分の課題を改善するような取り組みにチャレンジして、そのプロジェクトの内容と成果を全国青年農業者会議という場で発表するんです」

大出水さんはこのプロジェクトで作業を効率化する機械を開発し、宮崎県大会、九州大会と勝ち上がり土地利用型作物部門で最優秀の農林水産大臣賞を受賞しました。

大出水拓磨さん
(提供:大出水拓磨)

「うちは農家として大根もつくっているので、茶畑と大根の栽培管理を同時進行していくことになるのですが、毎年どうしても人手が足りなくなります。

そこで茶畑の畝(うね)を耕しながら水に肥料を溶かした液肥を散布できる機械を自作しまして。自作することで作業を効率化できたし、機械の購入コストも削減できました。それまでと変わらない方法で栽培している畑と試験区の畑では、後者のほうが収量も多くなったんです」

深層施肥機について
(提供:大出水拓磨)
大出水製茶
(提供:大出水拓磨)

「今年もおんなじ味だね」って言ってもらえるのが、じつは嬉しい

拓磨さんの尽きない研究心には、つくり手としての強い想いが垣間見えます。

他のお茶屋との付き合いやお茶の研修で県外に行くときには、研究のために必ずお茶を買ってきては大出水製茶のものと飲み比べるそう。なぜなら「自分の舌だけが信用できるから」。

「どこの家庭にもいつも買っているお茶があって、飲みなれている味というのがあると思います。突然、飲みなれているお茶が変な味に変わってしまったら、次からはそれを選びたくなくなってしまいますよね。うちのお茶を買ってくれているひとに、そういう思いは絶対してもらいたくない。

だから毎年買っていただくお客さんに『今年もおんなじ味だね』って言ってもらえるのが、じつは嬉しいんです」

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はじめは、どんなお茶を飲むのがおすすめですか?

ここまで、どんな農家さんが、どのような想いでお茶をつくっているのかご紹介しました。

さいごに、はじめてちゃんとお茶を飲むなら、どんなものを選ぶのがおすすめか? プロに教えていただきました。

「いろんなお茶を飲み比べるのもお茶の楽しみ方ですが、毎日飽きないお茶を飲みたいという欲が、たぶんみんな出てきます。そういうおいしいお茶はどこで飲めるのか?買えるのか? となると、やっぱりお茶屋さんのお茶。

天候不良で今年のお茶はだめだ……と農家が言い訳しても、お茶屋さんはブレンド技術があるので毎年おいしいお茶を仕上げられる。たとえば、うちも小売用の茶畑のお茶(深むし茶)だけでは味や旨味、香りという面で足りないことがあります。その部分を、別のお茶と少しブレンドして補うんです。

私はブレンド技術の凄さを知っているので、初めてお茶本来のおいしさを味わいたいという方には、ぜひお茶屋さんのお茶も飲んでみてほしいです」

大出水琢磨さん

(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)

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