愛媛県今治市を代表するタオルメーカーである「IKEUCHI ORGANIC」。この会社のことを最初に知ったときに、まず疑問だったことがあります。
それは、「企業指針」として掲げられている「2073年(創業120周年)までに赤ちゃんが食べられるタオルを創る」という目標について。
「『赤ちゃんが食べられるタオル』ってなんだ?」
最初に生まれた、最大の疑問。
その疑問を、食品工場の安全基準である「ISO22000」担当の曽我部健二さんに聞いてきました。
そこで聞けたのは、代表の池内さんから繰り広げられる「無茶ぶり」についてと、その無茶ぶりはすべて最高のものづくりのためにある、というお話でした。
曽我部 健二(そがべ けんじ)
ISO22000管理室・品質管理室 室長。今治生まれ今治育ち。現在も今治市内在住。好きなIKEUCHI ORGANICのタオルは「ストレイツオーガニック」。
「赤ちゃんが食べられるタオル」ってなんだ?
── 曽我部さんはISO22000のご担当なんですよね。
曽我部健二(以下、曽我部) ISO22000の管理責任者と、品質管理の責任者をやっております。
── 調べてきたのですが、ISO22000がどういうものなのかいまいちわからなくて。IKEUCHI ORGANICの掲げる「赤ちゃんが食べられるタオルをつくる」という目標のために、必要だったものなんですよね。
曽我部 そうですね。ISO自体はマネジメントシステムなので、そのシステムの運用をやっています。メンバーと一緒に社内のシステムの構築と運営、維持をやっています。ISO22000は具体的には──。
── 本来であれば繊維を扱うタオルメーカーが取得するようなものではない?
曽我部 そうです、そうです。
── 食品工場とか、食品関連の会社が取るものだとお聞きしました。
曽我部 そう。まず大前提として、IKEUCHI ORGANICは、会社の方針として「2073年(創業120周年)までに赤ちゃんが食べられるタオルを創る」という目標を掲げているんですね。
── そこで僕らが思うのは、「タオルって食べ物じゃないよね?」という当たり前の疑問なのですが(笑)。
曽我部 そうですよね(笑)。もちろん僕らにとっても最初はそうでした。これはもともと、代表の池内が「ISO22000を取得したい。お前が責任者やれ!」と言い出したことで、僕が担当になったんです。タオルは綿からできています。それを食品だと捉えたいと考えたときに「綿は食べない野菜」ではないかと。
具体的にどんなことをやっていったのか
── なんと言ったらいいのか……食べ物ではないタオルというものを、食べ物として捉えていく作業をしていったということですよね。
曽我部 そうです。だから最初は「本当に取得できるの?」という疑問しかありませんでした。専門のコンサルの先生と、「食べないものを食べるものとして考えること」をやっていったんです。コンサルの先生が来ない日もあるので、そういう日はひたすらネットで検索ですよ。
── ネット検索ですか(笑)。具体的に何をやったんでしょうか?
曽我部 たとえばマニュアルを作ったり、ルールをつくったり。そういった資料を、食品工場ではなく、イケウチの現状に合ったものにつくり変えていくのが仕事ですね。
一番大きな問題は、食べ物ではないんですけど、食べ物の管理の仕方でやらなければならないことで。今は、工場の中に入っていただくときにシューズカバーとキャップをしていただくんです。
曽我部 普通に考えると「なんでそんなことせないかんのかな?」っていうことをやっているんですよ(笑)。だって、取り扱っているものはタオルですから。
ただ、「赤ちゃんが食べられる=食品」と考えたときに、食品会社はこういうことをやっているから、それに近づけていく、ということをこれまでやってきたんです。
── どういうことをされてきたのか、なんとなくわかってきました。
曽我部 最終的にはISOの審査員が来まして、書類とかいろいろ見ながら質問されて、受け答えして、食品でやらないかんところでタオルだから当てはまらないところは除外して、それ以外のところで問題なしということで認定してもらえることになりました。
まぁ、でもね、僕は正直に言うと今まで会社に入ってから相当無茶ぶりがあったので「赤ちゃんが食べられるタオル」も、その一つってだけです。
すべては、ものづくりのために
── 今に始まったわけではないんですね(笑)。
曽我部 僕は今の役割になる前はタオルの「設計」という仕事をしていました。で、何かつくりたいタオルを思いついたら、紙にパッと描いて、渡されるんですよ。
- 参考:【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】「タオルは設計がすべて」社内唯一のポジションの後継者の胸の内|矢野浩次(近日公開予定)
── どんなことが描いてあるんですか?
曽我部 四角がまずあって、それはタオルですよね。ここに線があって、これはこういうことやとか、口で説明しながら描いていくんですよ。「じゃあ、あとはこれよろしく」って紙を渡されるんですけど。
自分なりにいろいろ解読して、理解しようとして。まずはね(笑)。でもやっぱりわからないことがあるから、「これどうするんですか?」ってもう一回聞きに行くんです。
── 無茶ぶりなんだけど、できたらやっぱりおもしろいですか?
曽我部 そうですね。やっぱり僕が好きなのは、ものづくり。自分が手がけたものが製品化されて世に出るっていうのは、すごく嬉しいことやと思います。代表も、ものづくりがすごく好きだからこそ、タオルのアイデアを出してくるわけですよ。だから無茶ぶりにも答えてしまう。
── 上司に無茶ぶりされるとイラッとするのが普通だと思うんですけど、曽我部さんはすごく楽しそうですよね(笑)。
曽我部 無茶ぶりする側は「このひとだったらできるやろ」っていうのがあると思うんですよ。できないひとには言わないだろうという信頼感があるんです。まぁ、迷惑は迷惑ですけど(笑)。
自分の会社の商品を心から「いいものだ」と思えること
曽我部 会社の方向性でも商品でもそうですけど、「ここへ行く」という気持ちがあって、実際に進んでいけることは、なかなかできることではないですよね。でも、IKEUCHI ORGANICはできてしまう。理屈抜きにそう思うんです。
僕は生まれも育ちも今治で、今も市内に住んでいます。別に、今治が好きでずっと残っていたというわけではないです。とりあえず、と思っていただけ。
でも今は、会社がなくならない限りは定年まで働こうって、思っていますね。ただ2073年までは会社にいないと思うので、次の世代のひとに、食べてくださいというしかないですね(笑)。
そうやって思えるのは、やっぱり自分の会社の商品をいいものだって心から思えるからです。
今治タオルもいろいろあるし、他の産地のタオルももちろんあるんですけど、明らかにうちの会社の商品は違うんですよね。息子が京都に住んでいるんですけど、帰ってくるたびにうちにあるIKEUCHIのタオルが消えるんです。
── ははは(笑)。
曽我部 自分の周りにいる、息子なんかもそうやっていいと思って使ってくれるのは、すごく嬉しいです。
(この記事は、IKEUCHI ORGANIC株式会社と協働で製作する記事広告コンテンツです)
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