誰もが忘れない、2011年3月11日。東日本大震災が起きたその日から、ちょうど一年経った2012年3月11日に、わたしは石巻市にいました。

津波で流された家々の跡地で、ボランティアの人々や現地の人が手をつないで大きな輪をつくり、黙祷を捧げました。わたしは、一緒にボランティア活動に入った子等のぬくもりを逃すまいと、海からの冷たい風にさらされながら手をぎゅっと握っていました。

あれから更に3年が経ちました。

石巻市や気仙沼で出会った地元のおばちゃんおじちゃんは、今はどうしているだろう、と時折考えます。そして、自宅訪問をした時に出会った一人暮らしのおばあちゃんが、何かしたくて訪れたわたしたちに「気にせんでいっちゃが」と力なく笑ったあの顔が忘れられません。

わたしのこういう記憶は、3月11日という日に関する出来事のなかでは、ほんの一瞬の出来事に過ぎないのかもしれません。前を向いて生きている人がいて、3年という時が経ってもまだ悲劇として仰々しく語るのは、筋違いかもしれません。

それでも、あの海風にさらされていた時間と、おばあちゃんの臥せった眼差しは、いつまでも心の奥に突き刺さったままなのです。

お国ことば解説

いっちゃが:宮城県の方言で「いいよ」「いいですよ」の意味。

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