株式会社WOODY Founder&CEOの中里祐次(以下、中里)さんと、発酵デザイナー・アートディレクターの小倉ヒラク(以下、小倉)さんは、早稲田大学在学中の頃からの仲。今回は、親友対談として、自分で仕事をつくる「キャリア形成」をテーマにお話していただきました。
中里さんの考える年齢説とは? 人生で挑戦できる人できない人の違いとは? 舞台は、おふたりが青春時代を過ごした、早稲田大学の戸山カフェテリアです。
中里 祐次(@wato)
2013年11月に株式会社WOODYを創業。
対談の前に:2年前にぼくが起業したタイミングで、ふたりとも独立して仕事をはじめました。今日は「キャリア形成」がテーマってことだけど、そんなにお堅くなく、生き方や仕事に対するお互いの考え方を話せたらいいなと。
小倉 ヒラク(@o_hiraku)
発酵デザイナー、アートディレクター。
対談の前に:祐次とは今でもよく会うけど、この間すごく気になるツイートをしていました。年齢と挑戦について。ぼくも自分なりに挑戦してきた人生だと思うから、いい話ができると思います。
中里 早稲田大学。2007年卒だから。8年ぶり?
小倉 8か9年ぶり。
中里 卒業して以来、おれ、一歩も足を踏み入れてないよ。
小倉 ぼくも。懐かしいね。
22、27、30歳が挑戦しやすいタイミング
小倉 この前、Twitterで祐次のツイートを見たんだけど、どういうことなのかずっと気になっていたんだよね。あれは何を考えていたの?
同調圧力に負けてチャレンジしない人生なんてクソだ。調べた事ないけど、年を食えば食うほど人はチャレンジ出来なくなると思う。もしかしたら、どんなに優秀な人でも24歳、27歳、30歳くらいのチャレンジタイミング逃すと一生チャレンジ出来ない気がする。
— 中里祐次 (@wato) 2015, 5月 7
中里 WOODYを創業してから、月1くらいのペースで「起業したい」という相談があってね。結論から先にいうと、相談に来る人は起業しない。いつまでたっても覚悟を決められないから。それがあまりにも多いと思って、投稿しました(笑)。
起業する人は、誰かに相談もせずに突然会社をやめて、「起業したんですけど、どうすればいいですか?」と、覚悟を決めてから来る人が多いんだよね。
小倉 22、27、30歳っていう年齢設定なのはどうして?
中里 22、27、30歳が挑戦しやすいタイミングだと思うから。22歳は、大学卒業前後でそのまま何か挑戦するパターン。27歳は、社会人3年目とか5年目で異動や昇格があって、仕事のフェーズが変わる時期。30歳は、周囲で結婚したり子供を産んだり、家を買ったりする人が増えてくるから人生の選択肢がほぼ見える時期。
こういう生活の変化が、挑戦を促す要素として大きいのかなと。もちろん起業する人の年齢はバラバラだけどね。
小倉 そうだね。祐次の年齢説を聞いて、すげえ合ってるぞ!と思って。
ぼくがちょうど27、30歳のときは、まさに大きな挑戦をしたから。27歳のときに、新興のスキンケア会社を辞めてデザイナーとして独立して、30歳には、せっかく自分で立ち上げた合同会社++(たすたす)を辞めて、菌の研究者になりました。
中里 そっかあ、発酵デザイナーって言い出したのは、ヒラクが30歳になってからかあ。
若手と言われる20代に、一発チャレンジをかましておけば、失敗してもまた2回、3回とチャレンジできる。けど、40〜50代になってから初めてチャレンジしようとすると、アクセルを踏めなくなると思うよ。
小倉 祐次が考える年齢説のなかでも、挑戦するハードルが低いのは27歳だよね。22歳のときは自分が仕事ができているかどうか自信がないし、いざ独立しようとしても、先が見えない場合が多い。
中里 たしかに、27歳で独立したり起業する人が多いね。
小倉 30歳だと家族ができる人もいるし、プライベートで別の問題を抱えちゃうこともある。27歳で勝負できるかどうかが、ひとつの分かれ目だね。
中里 ただ少しフォローすると、あくまでも「同調圧力に負けてチャレンジしない人が気になる」っていう意味で、その環境自体に納得しているのであればそれでよいと思う。「チャレンジする」と言っているのにしない人や、会社の愚痴ばかり言っていてその環境に感謝していない人が気になるという話で。
挑戦できるやつはKYだ
小倉 祐次から見ると、挑戦できる奴と、そうでない奴の違いはなんだろう?
中里 同調圧力に屈するか、そうでないかだと思う。周りの意見に耳を傾け過ぎるのは良くない。
起業をしようかどうかを相談しに来る人の話を聞くと、いろいろと言い訳があるんだけど、結局根底にあるのは「同調圧力」だと思う。言葉としては「今の会社への恩を返してからチャレンジしたい」「◯◯歳になったらチャレンジしたい」っていう言い方をしている人が多いけど。「失敗したら、かっこわるいんじゃないか」とか、「周りの人に辞めるべきではない」と言われるとか。そんなの当たり前だよね。
起業する人は、ちょっとKYくらいがちょうどいいと思うよ。起業家たちを見ても、誰に何を言われても、あんまり気にしてないし、もっと言えば関係ないと思ってるのかも。
小倉 祐次自身は? だって祐次もさ、WOODYを創業する前は、サイバーエージェントの子会社の取締役とかもやっていたから、辞めるときも背負ってるものがたくさんあったはず。
中里 まあ、おれは失敗や一般的な意見はあまり気にしないから。サイバー時代から、「KYだよなー、お前は」って言われまくってたよ(笑)。
小倉 つまりリスクは考えなかったの?
中里 一般的な最大のリスクは、終身雇用だと思って入社した会社に50歳まで勤めて、突然首を切られることだと思うんだよね。それが1番怖いと思っているってのがひとつある。あと、おれはもともと先が見えない環境が好きなんだよね。入社したての頃は、会社でできることや自分の成長が未知数で、わくわくしてた。
だけどサイバーで6年半勤めて31歳になったときに、「40歳では、こんなことをしているんだろうな」と想像できてしまってね。同じことを続けて、なんとなく安定するのはつまんないじゃん。
あとはサイバーエージェントは本当に居心地がいいから、長くいればいるほど抜けられなくなるなーって感覚もあった。
小倉 ぼくらの大学時代の友達は、みんな独立して自分で仕事をつくっているから、それが当たり前の錯覚を覚えてしまうよね。
多くの人は、じつは大学でつくったコミュニティのなかで、「生き方のガイドライン」を引いてもらっている気がする。学生時代は、少なからず周囲の友達からの同調圧力がかかっているだろうし。
中里 そう考えると、学生時代は大学内外を含めて、友達をつくったほうがいいよね。その後の生き方に大きく影響してくると思う(笑)。
小倉 みんな周りの目を意識しすぎでしょって、いつも思うけどね。
中里 逆にヒラクは自由すぎるの。
持たざる者だから、挑戦できる
中里 ヒラクはなんで挑戦できるの?
小倉 挑戦できるというか、結果的に新しいことへチャレンジし続けている感じなんだけど、それができるのは、ぼく自身が何も持っていないからだと思う。
たとえば、年収1,000万以上あるとか、社会的なステータスを持っている人だったら、挑戦することに対してすごくためらう気がする。でも持たざるものとして生きていると、余計なことを悩まなくても動けるんだよね。
中里 ヒラクは昔からそういうのに興味がないからな。
小倉 ないね。
中里 対してぼくは、結構一般的な人間だと思う。サラリーマンになって、できる仕事を増やして、キャリアステージを積み上げていく。既に舗装された道は一旦通ってみよう、という気持ちがある。
でもヒラクは、他人にとっての一般に全然興味がないというか、関係ない。ふつうの人の道にあるはずの同調圧力は皆無だし。ちょっと特殊だよね。
小倉 そういうのを感じたことはないね。
中里 ヒラクは本当に好きなことにしか、チャレンジしてないから。
小倉 だって、ぼくが船を漕いでる海は誰も居ないもん。同調圧力のかかりようがないよね。でも、ぼくだって以前は就職していたから、キャリアを積む道はあったはずなんだけど……。
中里 だけどおまえ、仕事場にふらっと来てふらっといなくなったとか聞いてるぞ。
小倉 勤務態度、最悪だったね(笑)。タイムカードがむちゃくちゃで。
中里 就職していても、一般的な正社員と同じかというと、ちょっと疑問だね(笑)。
後編は、サイバーエージェントから独立し、WOODYを創業した中里さんのキャリア形成について、小倉さんが切り込みます。
お話をうかがった人
中里 祐次(なかざと ゆうじ)(@wato)
㈱サイバーエージェントにて、インターネット広告ディレクションでTIAA受賞、広告プランニング/商品開発経験後、子会社の㈱プーペガール取締役。その後Amebaにて、ソーシャルゲームのスマートフォン対応、プラットフォームのオープン化担当、プロジェクト責任者などを経て独立。
小倉 ヒラク(おぐら ひらく)(@o_hiraku)
発酵デザイナー、アートディレクター。1983年東京生まれ。生態系や地域産業、教育などの分野のデザインに関わるうちに、発酵醸造学に激しく傾倒し、アニメ&絵本「てまえみそのうた」の出版。それが縁で日本各地の醸造メーカーと知り合い、味噌や醤油、ビールなど発酵食品のアートディレクションを多く手がけるようになる。自由大学をはじめ、日本全国で発酵醸造の講師も務める。グッドデザイン賞2014を受賞、最新作にアニメ「こうじのうた」。
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