去る2016年12月10日(土)に、灯台もと暮らし編集部主催で大忘年会と銘打ってイベントを開催しました。
2016年にもとくらで特集を組ませていただいた、高知県嶺北地域と宮崎県小林市、それから地域特集ではないけれど編集部みんながものすごく熱を込めて始めた「ぼくらの学び」特集の“ふたり暮らしに学ぶ”シリーズで、それぞれ取材させていただいた方々にお越しいただきました。
今回は、その中でも嶺北の部でお話しされたことをお届けします。
特集の公開後、周りの反応はどうだった?
今、町はどんな風に動いている?
そんな特集のその後を伺う、トークセッションです。
高知県嶺北地域からゲストをお招き
くいしん 次は進行をWaseiの代表の鳥井にバトンタッチしたいと思います。
鳥井弘文(以下、鳥井) はい! 次は僕と、高知県嶺北地域の特集を組んだ際、ご一緒させていただいた、NPO法人れいほく田舎暮らしネットワーク(以下、田舎暮らしネットワーク)のお二人とお話しさせていただきたいと思います。まずは、お二人から簡単に自己紹介をお願いします。
川村幸司(以下、川村) 田舎暮らしネットワークの事務局長をやっております、川村幸司と申します。こんばんは。僕は結婚して子どもができたことをきっかけに、地元の嶺北地域の土佐町へUターンしました。今は、嶺北に移住したい方々と地元をつなぐ仕事をしています。よろしくお願いいたします。
一同 (拍手)
鳥山百合子(以下、鳥山) みなさん初めまして、こんばんは。川村と同じく、れいほく田舎暮らしネットワークで活動をしている、鳥山百合子と申します。私は5年前に、神奈川県の伊勢原市から、家族で土佐町に移住しました。今はNPOでお仕事をしながら家族と一緒にお米や野菜をつくって暮らしています。よろしくお願いします。
鳥井 鳥山さんには、じつは「灯台もと暮らし」でも連載を持っていただいているんですよね。
僕らのメディアって、ほぼほぼすべて社内のメンバーが取材して、撮影して、ライティングもしているんですけど、例外的に、2〜3名の方には連載を持っていただいて。その中のお1人が鳥山さんで「今日の一枚」という連載で嶺北での季節ごとの暮らしを切り取るような記事を書いていただいているんです。
鳥山 はい。灯台もと暮らしさんが、土佐町と嶺北に取材に来てくださったあとに、拓郎さん(タクロコマ)から「ぜひ土佐町での暮らしのことを書いてくださいませんか」ってメールをいただいたんです。取材に来て、お会いできたことだけでもとても嬉しかったんですけど、自分が書かせてもらえるなんて、信じられなくって。
今は一記事ずつ拓郎さんとやりとりさせていただきながら書いてるんですけど、積み重なっていくのが嬉しくて、ありがたいなと思っています。
鳥井 タクロコマが鳥山さんのFacebookの投稿をいつも見ていて「もっと多くのひとに読んでほしい」という思いから始まった連載だったんです。あとは長野県の戸隠で地域おこし協力隊をやっている、栗原さんという方にも同じような連載をやってもらっていて。
- 【今日の一輪】「サザンカ」が町に降ってくる|長野県戸隠
鳥山 嬉しいです、ありがとうございます。
一つの町を取り上げるだけでなく、全域へ拡大した理由
鳥井 どうして高知県嶺北地域の特集を僕らが組めるようになったかというと、きっかけはちょうど1年くらい前に、僕が『TURNS』という雑誌の連載で、幸司さんの奥様であるヒビノケイコさんを取材させていただいた時のことでした。その時に、初めて幸司さんとお会いしたんですよね。
川村 そうですね。取材の後も意気投合して。
鳥井 その後、嶺北の居酒屋さんに連れて行っていただいて、夜遅くまで話し込みましたね。
川村 これから嶺北はもっと魅力的になるっていう話をしていました。
鳥井 いつかもとくらでも(嶺北を)取材させてくださいとお伝えしたのですが、最初の土佐町の特集はどういうきっかけで僕らにご連絡していただけたんですか?
川村 土佐町役場で、移住に関するパンフレットをつくりたいという話が出たのがきっかけです。
パンフレットってつくることにも意味があるけれど、手に取るひとが限られてしまうし、つくっておしまい、という感じになってしまうのはすごく勿体無いと思っていました。だから冊子もつくりつつ、webメディアにもパンフレットの内容をアップしてより多くのひとに届けたいと考えていたんですね。そんな時に真っ先に思い浮かんだのが、もとくらさんでした。
鳥井 ありがとうございます。最初は、高知県嶺北地域の土佐町のみにフォーカスした特集をつくらせていただきました。一度の取材で嶺北の4町村を取り上げるのは難しかったんですが、幸司さんたちが取り組まれているように、僕らも嶺北地域全体のつながりを見せたかったんですよね。だから日を改めて「大人が本気で遊び、暮らす町【高知県嶺北地域】特集、続けます」という形で再度特集を組ませていただきました。
特集する地域のエリアを拡大するというのは、今までうちではなかった形だったんですが、嶺北地域の今後の変化に並走したいという気持ちもあって。
川村 田舎暮らしネットワークとして移住支援をするとなった時、まずは地域に住んでいる移住者同士のネットワークを作ろうと周りを見渡してみると、移住者って土佐町だけでなく嶺北地域のいろいろなところに散らばっていたんですよね。それに4町村それぞれに違った魅力があるから嶺北地域全体を発信した方が、地域としての魅力が伝わるなっていう思いがあって。それで僕たちのNPOの団体名も頭に“嶺北”とつけているんです。
たとえば土佐町は今、教育にすごく力を入れていて子育てをする環境としてはとても良い。本山町には日本で最も美しい村連合にも認められた絶景の棚田があって、美味しい食べ物も豊富だったり、大川村は日本で一番人口が少ないから、村全体が家族みたいであったかい。大豊町は吉野川が流れていて、アウトドア好きなひとにとってはとても魅力的に感じられると思いますよ。
思いに共鳴できるかどうか
鳥井 取材中も同席していただいたと思うんですが、そのときの思い出や記事公開後の反響はいかがでしたか?
鳥山 取材中は、みなさんが私たちが紹介させていただいた方と、テーブルに座って向き合っている時の空気というか真摯な姿勢がすごく印象に残っていて、今でも私の心に焼きついています。こんなふうにひとのお話や、気持ちに寄り添えるあり方があるんだなって。
公開後の反響については、今日(2016年12月10日)も、じつは東京の高知暮らしフェアという移住希望の方の相談会に出ていたんですが「もとくらさんの記事を読んで来ました」という方が多いですし、嶺北に来てくださった時も「もとくらさんの記事に出ていた方に会いたいです」ということも本当によくありましたから、ありがたいなぁって。
鳥井 すごく嬉しいです、ありがとうございます。幸司さんは、どうですか?
川村 移住を希望している方って人生をかけて来るわけですし、来たら一緒に暮らしていくメンバーになりますから、移住支援は仕事を超えたものとして取り組みたいと常に意識しているんですね。僕らはただ単に地域に移住者が増えたらいいとは思っていません。移住して来られた方も地元で暮らす方も幸せになってくれて、一緒に地域を担っていけたらと思っています。もとくらさんの取材というか、全体的な雰囲気として、それと同じようなことを感じました。
鳥井 僕らも、自分ごととして捉えるというのはとても大事にしていますね。
川村 暮らすひとに寄り添う感じであったり、自分自身も取材をする中で何かを得たいと思っていたりする姿が印象的でしたね。
ただ移住者の数を増やすだけの施作として記事をつくってもらうと、きっと違ったものになってしまうと思うんですね。そういう意味で、僕らの思いと取り上げてもらうメディアさんの思いがしっかりマッチしているかどうかがすごく重要だと思います。
鳥井 特集公開後の反響に関しては、どうでしょう?
川村 反響が大きかったのは、瀬戸さんの記事かなぁ。教育を中心に取り組む地域おこし協力隊として移り住んで来た方なんですけど、彼の考え方に共感する読者の方も多く、教育を大切に考えているひとはやはり多いんだなという印象です。実際、瀬戸さんを通じて嶺北に新たに移り住んで来る方も増えてきたりと、取材していただいてから約1年経った今、ひとの流れも変化しつつあるなと実感しているところです。
嶺北は、今がちょうど歴史の転換期
鳥井 ひとがひとを呼ぶという流れができつつあるんですね。最後に、今後はそういった流れの中で嶺北はこれからどんな風になっていくか、どうしていきたいかをお二人に伺いたいです。
川村 これからは、地元のおじいちゃんやおばあちゃんに、僕らや新しく移住してきたひとたちの動きや思いを理解してもらえるようにどれだけ丁寧に働きかけられるかどうかが肝になるなと感じています。若いひとやお年寄りが一緒になって地域の未来をつくっていくっていうことを、もっと意識していかなきゃいけないなって。
鳥山 うちには子どもが3人いるのですが、地域のおじいちゃんとおばあちゃんから「ゆうくん、学校? いってらっしゃい」っていっぱい声をかけてもらって、褒めてもらって。そんな風に、土佐町や嶺北で長い間培われてきたひとのつながりや「こどもは地域の宝」という意識のような、昔からの土台があってこそ、未来をつくっていくことができると思うから。地域の方々と一緒に考えていくことはとても大事ですね。
川村 ゆうくんって、鳥山さんの息子さんなんだけど、よく「ちょっと遊びに行ってくる」って、近所に住むおじいちゃんと世間話しに遊びに行きますよ(笑)。
鳥井 へぇー!
川村 そうやって自然に、世代を超えて学び合える環境があったら素敵ですよね。お年寄りから子供たちに智恵が引き継がれていく。こういう環境づくりこそが、これからの地域の教育には大切なんだと思います。
鳥井 ますます嶺北のこれからが楽しみになりました。僕らも特集だけで終わりではなくて、今後も何かご一緒できればと思っています。
この後は懇親会に移りたいとおもうので、もし嶺北での暮らしに興味がある方は、ぜひお二人にお話を聞いてみてください。ありがとうございました!
川村・鳥山 ありがとうございました。
もとくら大忘年会を終えて
特集でお世話になった方々と再会できるのは、本当に嬉しい瞬間です。
取材をするだけで完結せず、過去と現在、そして未来を一緒に見せていただいている気分になるからです。
懇親会では、もとくら編集部に会いに来たと言ってくださる方もいらっしゃいました。
2017年も、こんな風に取材させていただいた方と読者の方々を、編集部がつなぐ場所もどんどんつくる予定です。
今年はどんな地域に行くだろう? どんな出会いがあるだろう? 芽吹きの季節が今から楽しみです。