「灯台もと暮らし」の編集部員が、これからの暮らしを考え、学ぶ企画【ぼくらの学び】。ぼくは「ふたり暮らしに学ぶ」ことを考えてみたいと思います。なぜなら、日本各地で出会ったパートナーと力を合わせて暮らす夫婦の姿に憧れて、ぼく自身が付き合って2年を迎えたばかりの彼女と同棲することにしたからです。
第2回目を迎える今回は、「プロポーズ」について学びます。鹿児島から上京し、同棲を経て婚約に至ったカップルにお話をうかがいました。
いつ、何がきっかけで婚約されましたか?
── おふたりはどこで出会ったんですか?
下津曲 浩(以下、しもつ) ぼくらはふたりとも鹿児島県出身です。19歳の時に、彼女と鹿児島で知り合いました。場所はぼくがアルバイトしていたCDとか本、雑貨を売ったりレンタルしたりしているお店で、彼女が社員として働いていたんです。
ちほ ある日Facebookで、「ごはんを食べに行きませんか?」って声をかけてくれたよね。
しもつ 名札を見て名前だけ知っていたので、どうにかして彼女に声をかけたいと思って。Facebookで検索して友だち申請して、ぼくがメッセージを送ったんです。
── どうしてちほさんに声をかけようと?
しもつ 当時、彼女は今よりも髪の毛が短くてパーマをかけていたんです。田舎にもこんなにお洒落なひとがいるんだなぁと思って……つまり一目惚れですね。
── 何がきっかけで付き合うことになったのでしょうか。
しもつ 高校生だったぼくは、1回目のデートで次の約束を取り付けたら「勝ち」──つまり付き合える──という情報だけを仕入れていました(笑)。そこで、初めてご飯を食べに行った日の帰りに「映画に行きましょう」と、2回目に会う約束をしたんです。実際に2週間後くらいに映画を観に行って、その日の帰りに告白しました。
── 何て告白されたんですか?
ちほ 率直に、「付き合ってもらえませんか?」と。
しもつ うん。
ちほ その時に私は、「結婚を考えたうえでのお付き合いじゃないと嫌です」ということと、次の年に彼が大学進学で上京することを聞いていたので、「上京するまでのお付き合いだったら付き合う気はありません」と伝えました。そうしたら「結婚を考えている」と言ってくれたんです。
── その時しもつさんは、まだ19歳ですよね……? 結婚という言葉に動揺しなかったんですか?
しもつ 全然動揺しなかったです。付き合い始めた翌年の4月には鹿児島の学校を卒業して上京しちゃったんですけどね。
── その間、ちほさんは変わらず鹿児島でお仕事をしていた、と。
ちほ そうです。
── どのタイミングで東京にいらっしゃいましたか?
ちほ 彼の就職するタイミングと、私が新しい仕事がしたいと思ったタイミングが重なったので、去年の春に東京へ来ました。私が上京すると同時に同棲生活を始めて、1年後になる今年の2月にプロポーズしてくれました。
── しもつさんは、なぜそのタイミングに?
しもつ 知人経営者や編集者の方と上野でお寿司を食べながら飲んでいて、いつ結婚するのかという話になったんです。で、明確に決めていなかったので、「いつですかねぇ」って話していたら、「じゃあ今日でしょ!」となりまして(笑)。
── 急ですね(笑)。
しもつ その経営者の方は、代表印を婚姻届に押してくれると言ってくれるくらい、本気で応援してくれていて、その気持ちに背中を押されましたね。「じゃあ婚約します」と告げて、飲み会を終えた数日後のバレンタインデーに指輪を買い、その日にプロポーズしました。
同棲生活のルールや習慣はありますか?
── 婚約に至る同棲生活には、うまくいく秘訣があると思います。おふたりの間で何かルールや習慣はありますか?
しもつ ルールというほど厳しいものではないんですが、彼女からの連絡は、できるだけ早く返事をするようにしています。即レスをすると、彼女が安心するのがわかるので。
ちほ 彼が高校を卒業して同棲を始めるまでの遠距離恋愛していた時もそうで、彼は返事がめちゃくちゃ早くて、すごくありがたかったですね。
しもつ 毎日なんらかの連絡はしていたので、やりとりしないまま日を空けてしまうことはなかったんですよね。だから心が離れるようなことはなかったんじゃないかな……。
ちほ あと、毎日必ず、一日の流れを相手に説明しますね。今日はこういうことがあって、夜に飲み会があるよとか。前の日の夜寝る前か、朝起きてすぐ話します。
しもつ お弁当が欲しかったらその時に伝えています。あとはお互いの予定がわかるようにGoogle Calendarを共有しているので、例えば、彼女はぼくが何時まで仕事をしているのかわかっています。
── 仕事で外泊して2〜3日ぶりに帰ってきた時には、しもつさんはその数日分の出来事を共有するんですか?
しもつ しますね。めちゃくちゃぼくがしゃべります。ほぼ全工程を喋りますね。
── 本当ですか(笑)。
しもつ 話したがりなんですかね(笑)。
── 同棲を始めると一緒に過ごす時間が長くなるので、イラッとしたり不満に思ったりすることは、もちろん増えると思います。そういう時におふたりはどうしているのか、教えてもらいたいです。
ちほ 何か不満に思うことがあった時は「こう思ったからいやだったんだけど、どうしてそうしたの?」って、自分がいやだと感じる理由と、相手の行動の理由を、すぐに聞くようにしています。
しもつ たしかにそれはルールかもしれないね。
── 具体的にはどういうことでしょうか。
ちほ じつは今朝、(取材の)待ち合わせ場所だった井の頭公園まで、彼と別々で来たんです。彼が「もう少し家にいたい」と言うから。
しもつ チャットで仕事のやりとりをしていたので、15分くらい家で作業をしたかったんですね。
ちほ 「作業したいから先に行っていて」って言ってくれればいいのに、理由を教えてくれないから、どうして別々に行動するのか私にはわからなくて。一人で公園に向かいながら、「今モヤモヤしているんだけど……、なんで一緒に家を出られなかったの?」って、すぐにLINEしました。
ちほ お互いちょっとでもモヤモヤしたらすぐに伝えて、喧嘩を持ち越さないようにしています。喧嘩していると夜寝られないので(笑)。
── なるほど。同棲を始めてからこれまで、数日間不穏な空気で過ごすことはなかったんですか?
しもつ ないですね、いやな空気が続くのは長くても6時間くらいです。
── でも喧嘩を持ち越さないことって、その方が良いと思っていても、なかなかできることじゃないですよね。どちらかが我慢したり、妥協したりして結果的にすれ違って別れるカップルが大半です。おふたりが率直に言い合える信頼関係を築けているのはなぜでしょうか?
しもつ ぼくらはお互いのことで少しでも居心地や雰囲気が悪くなると、他のことに手がつかなくなってしまいます。その状態が我慢できないだけな気がしますね。
タクロコマさんが心配するとおり、些細なことでイラッとしたり喧嘩したりするようになったのは、ぼくらも同棲を始めてからのほうが多いです。けど、少しでも良い雰囲気で一緒に過ごしたいじゃないですか。「居心地のいい関係でいたい」と思うし、そのための努力をしているから、率直な気持ちを言い合えるんだと思います。
── やっぱりお互いの努力があって、同棲から婚約に至るんですね。
プロポーズに「締切」は必要ですか?
── 同棲するにあたって、今ぼくがいちばん考えているのが……プロポーズして婚約するのか、別の道を歩むのか、はっきりさせるための「締切」は必要かどうかということです。今年で彼女と付き合って2年目ですが彼女の貴重な時間をもらっているので、どこかのタイミングで白黒はっきりさせるべきなんだろうなと感じていて。
ちほ 締切がある方がいいと思います。同棲のままでいるほうが楽で、そのまま結婚しないカップルも多いから。私は宙ぶらりんな関係でいるのは嫌だったので、どこかのタイミングで結婚したいという気持ちはありました。
── おふたりの間ではいつまでに答えを出すか、という締切の約束は交わされなかったいうことですよね?
ちほ そうですね。
しもつ プロポーズするかしないかで悩むということは、タクロコマさんは今後自分の気持ちが変わるかもしれないから、今の段階では婚約するかどうかわからないということですか?
── 正直にいうと、わからないのかな……。まだ一緒に暮らし始めたばかりだから、という言い訳しかできないのですが。もし仮に、プロポーズしてくれる前にぼくみたいな考えをしもつさんが持っていたとしたら、ちほさんはどう思いますか?
ちほ もちろんタクロコマさんの気持ちはわかりますが、決めきれない状態が続くのだったら、もっと他にいいひとがいるかなって思う(笑)。そういうふうに男性が思っていると、彼女は「もうこのひととの結婚はないんじゃないかな」って思っちゃう気がします。
しもつ 仮にプロポーズする締切を設けたとしても、もし「その締切を1年伸ばしてくれ」って打診すれば、彼女さんはタクロコマさんに見切りをつけてしまうかもしれませんよ。
── なるほど、自分の意識の至らなさが身にしみますし、非常に学びになります。
しもつ お出しした黒ウーロン茶を、もう飲み干してますもんね……。
一同 (笑)
- 学び1)コミュニケーション不足ですれ違いを避けるために、一日の流れを相手に説明し、その日の出来事の報告も積極的にする
- 学び2)不満に思うことがあればすぐに本音で話し合い解決する。居心地のいい関係でいるためお互い努力をする。
- 学び3)プロポーズするか否か決めきれない関係でいることは、相手に失礼。同棲生活に締切を設けること
お話をうかがったひと
下津曲 浩(しもつまがり ひろし)
株式会社Lucky Brothers & co. 取締役。鹿児島県霧島市出身。大学時代にWebメディアを立ち上げ、その収益を元に暮らしていくことを画策するも、卒業を機に志半ばで断念。その後、編集者としてのキャリアの第一歩として、デジタルマーケティングを手掛ける大手Webプロダクションに新卒として入社。鹿児島県出身だが、焼酎が全く飲めないという痛恨の弱点を持つ。
ちほ
鹿児島県霧島市出身。2015年春にこれまでずっと住んでいた地元を離れ、上京。現在は都内にある和菓子店にて販売員として働いている。Instagramで、「#きょうの冷蔵庫」を定期的に更新中。
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