「今年の海はおかしい」。海士町暮らし4年目ですが、この言葉を、島のどこかしらで毎年聞いている気がします。
2年前にシマメが獲れなかったとき「今年の海はおかしい」と誰かが言っていました。逆にシマメが大漁だった去年も、同じことを誰かが言っていました。そういえば今年は赤潮が少ない。海は、日々変化し続けているのかもしれません。
「今年の海はおかしい」というと、なんだか状況が悪いような気がします。でも、この台詞を毎年聞いていると、不思議と慣れてきます。
考えてみると「今年の海はおかしい」という言葉は、人間が自然の変化に順応しようとする様子を表しているようで、挑戦的です。けれど自然の立場に立ってみると、変化は当たり前のこと。島で語られるこの台詞は、滑稽で、人間の小ささが表れているように思えてくる。あらためて、自然の中に僕らの暮らしがあるとよくわかります。
今年の島の海は、海藻がすごく成長しています。「海中展望船あまんぼう」に乗ってみましたが、ホンダワラという種類の海藻が、海面までグンと伸びて海中が森のようになっていました。海の温度が温かくなると、この海藻は地面から抜けていくそうです。
森のような海中が見られるのは今の時期だけ。そう思うと「今年の海はおかしい」という言葉は、素敵な意味をもっていることに気づきます。