2016年1月22日、ちよだプラットフォームスクエアにて、先進的な取組みをする5地域が連携して行う人材育成プロジェクト「地域共創カレッジ」のキックオフイベントが開催されました。地域に関心のあるひとなら誰でも一度は聞いたことがあるであろう、海士町・神山町・上勝町・女川町・西粟倉村という5地域。この名前が揃っただけで、なんだかワクワクすることが起こりそうな予感がします。

本記事では、主催の株式会社アスノオト・代表の信岡良亮さんが地域共創カレッジを立ち上げた背景とその概要について迫ります。

地域共創カレッジとは

地域共創カレッジとは、地域と実際にプロジェクトを協働しながら学べる、地域アライアンス型の教育事業です。受講生は都会にいながら、上記5地域のようなモデル地域のソーシャルアントレプレナー(社会起業家)たちとともに、新しい未来を共創するプロジェクトに取り組みます。その実践から「都市と地域の共創モデル」を学ぶプログラムです。

6ヶ月に渡るプログラムの形式は、座学ではなく実際にプロジェクトを立ち上げるところから参加する、プロジェクト・ベースド・ラーニング形式を採用。第1期の受講生の募集定員は20名を予定しています。受講生は4名ずつに分かれてグループとなり、後述する5つの地域で都市と地域の未来のためにできるプロジェクトを計画・実践していきます。

「都市と地方の共創関係」のモデルケースを増やしていく

地域共創カレッジ:信岡良亮さん

そもそもアスノオトの信岡良亮さんが、地域共創カレッジを立ち上げたのはなぜなのでしょうか。

背景には、日本の人口減少という課題があります。現在、日本は人口が減っていく時代に突入しています。今までの仕組みは人口が増加することを前提に作られてきた社会システムでしたが、それがだんだん機能しなくなってきているのです。

「都市で暮らしていると、人口が減っていく実感が湧きにくいかもしれません。しかし日本の地域ではすでに人口減少が進み、産業の衰退、学校の廃校化、空き家の廃屋問題、コミュニティ維持活動の低下など、問題が表面化してきています」(信岡さん)

近い将来、人口減少の波は都市部の生活にも大きな影響を与えるといいます。

「都市部で暮らすぼくらに、今からできることの一つとして、人口減少社会を迎えながらも未来に挑戦するソーシャルアントレプレナーたちと、これからの担い手として都市で腕を磨いているビジネスパーソンたちとをつなぐこと。この地域共創カレッジは、新たな社会システムが求められる未来に向けた“都市と地方の共創関係”のモデルケースを増やしていくことを目的に開講しました」(信岡さん)

連携する5地域のアントレプレナーたち

地域共創カレッジで連携する5地域のアントレプレナーたちは、以下の5名です。

株式会社西粟倉・森の学校の牧大介さん

岡山県西粟倉村で森林再生をしている、株式会社西粟倉・森の学校の牧大介さん。

徳島県の神山町から、NPO法人グリーンバレーの祁答院弘智さん。

サテライトオフィスを設置することで、移住しても東京の仕事を続けられる環境をつくった徳島県の神山町から、NPO法人グリーンバレーの祁答院弘智さん。

一般社団法人ソシオデザインの大西正泰さん。

葉っぱビジネスでお婆ちゃんが1,000万稼ぐことで有名な徳島県上勝町から、一般社団法人ソシオデザインの大西正泰さん。

宮城県女川町から、NPO法人アスヘノキボウの小松洋介さん。

東北の震災復興に注力している宮城県女川町から、NPO法人アスヘノキボウの小松洋介さん。

島根県隠岐郡海士町から、株式会社巡の環の阿部裕志さん。

そして島根県隠岐郡海士町から、株式会社巡の環の阿部裕志さんです。

学びをサポートする講師陣

地域に根付いて暮らす講師陣に加えて、都会にも講師陣がいます。

『不都合な真実』の翻訳チーフを務めた環境ジャーナリストの枝廣淳子さん、「マイプロ」の発案者で、日本にソーシャルアントレプレナーという言葉を持ってきた井上英之さん、「自分の仕事をつくる」という本の著者としても有名な働き方研究家の西村佳哲さんとなっています。

都市と地方の共創モデルを担う人材へ

地域共創カレッジ

アスノオトの信岡良亮さんは、プログラムを通じて都市的なビジネススキルと田舎的なヒューマンスキルを兼ね備えた人材を育成することが目標と述べました。また受講生たちは都市と地域をつなげる仕事に携わり、人材と地域との新たな関わり方、すなわち都市と地方の共創モデルを担います。

  • 都市で生活しながらも地域と関わるような次なるキャリアステップを模索しているひと
  • 現在の働き方だけではない方法で、社会の課題解決に取り組んでいく関わり方を模索しているひと
  • 都市でおこなっている仕事そのものを通じて、地域と一緒に未来を創っていきたいひと

プログラムの対象となるのは、都市で腕を磨いているビジネスパーソンが主でしょう。地域共創カレッジは2016年5月から開始を予定しています。プロジェクトベースで地域と一緒に働きながら学べる地域アライアンス教育事業に、これからの働き方や暮らし方のヒントがありそうですね。

お話をうかがったひと

牧 大介(まき だいすけ)
西粟倉・株式会社森の学校ホールディングス 代表取締役
1974年生まれ。京都府宇治市出身。京都大学大学院農学研究科卒業後、民間のシンクタンクを経て2005年に株式会社アミタ持続可能経済研究所の設立に参画。2009年に株式会社西粟倉・森の学校、2015年10月に株式会社森の学校ホールディングスを設立。森林・林業、山村に関わる新規事業の企画・プロデュースなどを各地で手掛けている。

祁答院 弘智(けどういん ひろとも)
神山町・NPO法人グリーンバレー理事
大学卒業後、不動産コンサルタント会社などを経て、2008年、四国のNPO事業や地域活動の企画・プロデュース会社「リレイション」設立。現在、徳島県神山町のNPO法人グリーンバレーが主催する「神山塾」こと(地域滞在型人材研修)や「神山で地球を受継ぐ!」棚田再生事業のほか、行政、各種団体の人材研修やプロジェクトマネジメントほか、四国の暮らし甲斐を語る・くつろぐ・記録するフリーペーパー『KATALOG』の発行などに携わる。

大西 正泰(おおにし まさひろ)
上勝町・一般社団法人ソシオデザイン 代表理事
四国徳島出身。教員→経済産業省・起業支援プロジェクト四国エリア担当→起業→製薬会社→地域再生ビジネスへと移っていった変わり者。現在、葉っぱビジネスで有名になった上勝町で、起業家育成による雇用創出を行う。日替わり店長が行うシェアカフェ、シェアバー、シェアハウス2棟、イタリアンレストラン、フィジー留学、オンライン教育など、シェアオフィスなどをこの4年間で作り続ける。この間、人口1700人の町で18もの事業が立ち上がり、うち1/3の案件を手掛ける。自生的秩序に基づく起業インフラ整備に力点を置く。池田高校で甲子園に4度、応援団として出場したことが自慢。徳島・香川大非常勤講師など。

小松 洋介(こまつ ようすけ)
女川町・NPO法人アスヘノキボウ 代表理事
1982年7月2日生まれ。仙台市出身。2005年4月―2011年9月まで株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に在籍。ブライダルカンパニーにて、2008年10月青森秋田岩手グループ青森拠点長、2010年4月 北海道グループ札幌リーダーに就く。2011年9月にリクルートを退職し、東日本大震災による宮城県最大の被災地である女川町にて2012年1月、民間団体 女川町復興連絡協議会 戦略室 室長補佐、2013年4月特定非営利活動法人アスヘノキボウ代表理事、2014年4月女川町商工会職員として、まちづくり担当を兼任。国内外と女川をつなぎ、まちづくり、創業、事業開発、移住、人材育成等に関わっている。

阿部 裕志(あべ ひろし)
海士町・株式会社巡の環 代表取締役
愛媛県生まれ愛知県育ち。京都大学大学院(工学研究科)修了後、トヨタ自動車入社。生産技術エンジニアとして新車種の立ち上げ業務に携わる。しかし現代社会の在り方に疑問を抱き、新しい生き方の確立を目指して入社4年目で退社。2008年1月、「持続可能な未来へ向けて行動する人づくり」を目的に株式会社巡の環を仲間と共に設立。2011年4月より海士町教育委員に就任。大学在学中から自給自足できるようになることを目指し、アウトドアや農業を通して大自然の雄大さ、命のありがたみを学ぶ。海士に来てからは素潜りにハマる。

信岡 良亮(のぶおか りょうすけ)
株式会社巡の環の取締役。株式会社アスノオト代表取締役CEO。関西で生まれ育ち同志社大学卒業後、東京でITベンチャー企業に就職。Webのディレクターとして働きながら大きすぎる経済の成長の先に幸せな未来があるイメージが湧かなくなり、2007年6月に退社。小さな経済でこそ持続可能な未来が見えるのではないかと、島根県隠岐諸島の中ノ島・海士町という人口2400人弱の島に移住し、2008年に株式会社巡の環を仲間と共に企業。6年半の島生活を経て、地域活性というワードではなく、過疎を地方側だけの問題ではなく全ての繋がりの関係性を良くしていくという次のステップに進むため、2014年5月より東京に活動拠点を移し、都市と農村の新しい関係を模索中。