【島根県海士町】特集を組んできた『灯台もと暮らし』。現在、武蔵野大学と株式会社巡の環が協働で行う「海士ゼミ」の密着取材をしています。テーマは「都会と田舎の新しい関係を考える」。学生たちと共に、座学や、フィールドワークを交えながら、2015年6月から2015年11月の約半年間に渡って海士町の未来を探ります。
思考し、計画し、行動、そして発表する場を用意された、次世代を担う若者たちの想いはいかに? 講師を務めるのは、武蔵野大学の明石修(以下、明石)准教授と、株式会社巡の環(めぐりのわ)取締役の信岡良亮(以下、信岡)さんです。

講義一覧

新しいことをはじめるときは「怖さ」を覚えるもの

信岡良亮(以下、信岡) ぼくらは「なりたい未来の自分」の姿に、簡単に到達できるものなのだろうか?

新しく何かをはじめるとき、人は基本的に「怖さ」を覚えるもの。最初はうまくいかないし、大多数の人が持っている価値観とは違うから、馬鹿にもされやすいと思う。でも、時代は変化しているんだから、その変化が自分にとって必要なものだと受け入れて、諦めずにやれるかどうかがとても大事だよ。

「プランB」とは、次の時代を切り拓く新しい方法

「プランB」とは、次の時代を切り拓く新しい方法

信岡 ここでは、衰退していく既存のやり方を、「プランA」というのに対して、生まれたばかりだけど、次の時代のための新しい方法となる全く別の価値観を、「プランB」と呼ぼう。

たとえるならば、ラジオとテレビの関係はそれに当たる。まだラジオが情報源として主流だった頃は、ラジオ業界に発信力がありました。でも1950年代後半から多くのテレビ局が開設されて、一般に普及し始めたんだ。

2000年代を迎えた今、今度はテレビとインターネットの間でそれが起きている。インターネット黎明期は、有償無償の人が自分勝手なことを喋る場で、つまり「2ちゃんねる」が代表のようなイメージでした。でも今ではインターネット上にある情報が徐々に受け入れられて、メディアとしての力を持ってきています。

さて、このようにインターネットが台頭している状況で、もしみんなが今から就職活動をするとしよう。

成熟したテレビ業界に就職するのを「プランA」、そしてまだまだ成長の可能性が大きいインターネット業界で仕事をつくっていくのを「プランB」とすると、「プランA」の方が、「最初は安定して見える」んだよね。でも、誰かが次の時代のための新しい方法を切り拓いていかないと、「プランA」は衰退していき、他の方法がなくなってしまうでしょう。しかし、「プランA」の衰退をとどめて、今いる業界を少しでも持続可能な方向にする方法(=プランA)と、今からまったく新しく持続可能になるためのシステムをつくっていく方法(=プランB)がある。これらは、どちらも必要なんだよね。

でも、みんなは明らかに「プランB」をつくっていく世代だと、ぼくは考えています。これからは、今の常識だと「よくわからないこと」にたくさん挑戦しながら、新しいことを生みだしていくことに慣れる必要があるんじゃないかな。

これはすなわち、「地域のフェーズ1~3」を体験して、一人ひとりが少しでも変化に対応できるようになろう、ということ。変化に対応できるチームから「プランB」のコミュニティができあがっていくんだと思う。

──第3回に続きます。

(イラスト/Osugi)

【島根県海士町ゼミ】講師陣について

信岡良亮さん
講師:信岡 良亮(のぶおか りょうすけ)

取締役/メディア事業プロデューサー。株式会社巡の環の取締役。関西で生まれ育ち同志社大学卒業後、東京でITベンチャー企業に就職。Webのディレクターとして働きながら大きすぎる経済の成長の先に幸せな未来があるイメージが湧かなくなり、2007年6月に退社。小さな経済でこそ持続可能な未来が見えるのではないかと、島根県隠岐諸島の中ノ島・海士町という人口2400人弱の島に移住し、2008年に株式会社巡の環を仲間と共に企業。6年半の島生活を経て、地域活性というワードではなく、過疎を地方側だけの問題ではなく全ての繋がりの関係性を良くしていくという次のステップに進むため、2014年5月より東京に活動拠点を移し、都市と農村の新しい関係を模索中。【募集中】海士町でじっくり考える「これからの日本、都市と農村、自分、自分たちの仕事」

明石教授

ゼミ主宰:明石 修(あかし おさむ)
武蔵野大学工学部環境システム学科准教授。博士(地球環境学)。京都大学大学院地球環境学舎修了後、国立環境研究所に勤務。地球温暖化を防止するための技術やコストをコンピューターシミュレーションにより明らかにする研究に従事する。その一方で、環境問題の解決において技術的対策は対症療法に過ぎず、社会を真に持続可能なものにするためには、社会や経済の仕組みそのものを見直す必要があるのではという問題意識を持つ。2012年に武蔵野大学環境学部に移ってからは、おもに経済的側面から持続可能な社会の在り方について研究を実施。物的豊かさをもとめる人類の経済活動は肥大化し、本来あるべき地球のバランスが崩れてしまった今、もう一度自然や地域コミュニティに根ざした社会をつくりなおす必要性を感じ、そうした場としてローカルな地域での暮らしや経済に関心を持っている。

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