「地域の資源を地域で使う。そして地元の雇用を生む。それが何よりも大事です」。
北海道下川町で、森林組合から加工業を独立させ2014年に設立された会社「下川フォレストファミリー株式会社(以下、フォレストファミリー)」の山下社長は、取材中、そう何度も繰り返しました。
わたし、「灯台もと暮らし」編集部・立花が暮らす下川町には、切り出した木材を一時的に置いておく土場がたくさんあり、森と働く企業8社、工場は9つあります。
その中でも比較的新しいのが、2014年に設立されたフォレストファミリー。
町面積の9割が森林という豊かな財産を、どう活かすのか。そして、森林とともにある事業を、どう未来へつなげていくか。
会社の世代交代の時期としても、新たな帰路に今フォレストファミリーは立っています。
循環型森林経営が根付く町でできること
下川町では、森林面積のうち、ほとんどが国有林で国の管理下に置かれるため、町民の私たちでも自由に木々を伐ったり使ったりすることはできません。森林の約1割ほどが町有林として、産業を生み出す源になっています。
木を伐り、山から運び出して製材し、それを各事業者へ販売。その後、加工して人々の手に届けるまでのプロセスが、下川町内で完結されています。これは林業を営む人々にとって、一番理想的な形だと言います。
森林が資源の源である“川上”とすると、フォレストファミリーは木材加工、つまり“川中”を担う会社です。
木と木を圧縮させて強力なボンドのような接着剤でくっ付け、それを重ねて一枚の板にする集成材の加工・生産や、トドマツ、カラマツなどの針葉樹やナラやタモといった広葉樹を使ったフローリングをつくっています。
集成材は、住宅の壁やテーブル、収納棚に使われる造作用集成材と、建造物の骨組みとして使われる構造用集成材の2タイプ。
国内の建築物に使われている木材のほとんどが外国から輸入した木材だと聞くと、どうして日本の豊かな森林資源を使わずに、そんなもったいないことをするのだろうと思わずにはいられません。
大量の安い木材が輸入されることが当たり前だった時代。
下川では、時代の雰囲気に呑まれることなく、森づくりが町の未来をつくると信じて60年以上前から「循環型森林経営」を行なってきました。
木を植えて育て、切ってまた植えるという文字通り“循環”型森林経営の地道な努力は、森を守り、ひとを育て、また下川に暮らす人々の森林への愛着と誇りをつくってきたように感じます。
働いているひとが幸せでなければ意味ないから
フォレストファミリーの山下社長が「地域の資源を地域で使う。そして地元の雇用を生む。それが何よりも大事です」と繰り返し、地域の雇用にこだわるのは、会社の成り立ちにあります。
循環型森林経営を愚直に行なっていた下川町でしたが、安価な木材に経営が圧迫され、森林組合は下川町発の林業の目玉の一つでもあった集成材加工業を撤退することに。
その苦渋の決断をしたのが、山下社長自身でした。それが、2012年のこと。
森林組合の手は離れるけれど、なんとか集成材の事業を残したい。
山下社長は、その意思を持つ組合や町の人々と話し合いを重ね、フォレストファミリーという別会社を立ち上げて事業を継承する選択をしました。
「この会社は、立ち上がる時に町内のひとに出資してもらってできたところなんですよ。だから、僕たちは下川産の集成材を守っていく義務がある。
それに、企業が存続するためには、ただ会社というハコだけがあればいいわけじゃない。従業員全員の生活が安定することが、何よりも一番重要。働くひとが幸せじゃなかったら、企業なんてやっていけませんからね」(山下社長)
日本全体で高齢化が進み、人口は減少していく未来を見つめながら、木材を使ってできることを探るフォレストファミリー。企業と同様、木材も、ただモノを力技でつくって売るのではなく、アイディアや見せ方などいくらでも工夫のしどころはあります。
「最初はどんなに小さい規模でもいいから、自分たちのブランドをつくって自社の価値を高められるモノづくりをしたい」と話すのは、加工場を担う後藤さん。一度だけの大きな企画ものではなく継続的に繋がって共同することで、下川の森の循環も活き、かつフォレストファミリーとしてのブランドにも磨きがかかるのではと言います。
「仕事ですから大変なこともいっぱいあるけど、やっぱり僕もモノづくりが好きなんですよね。完成したものを喜んでくれるひとの顔を見られると、続けてきてよかったなって毎回思います」
「受注を受けてゼロからつくる製品は、求められたレベルのものをしっかりつくる楽しさがあるけど、お客さんとの距離はどうしても遠く感じることがあります。でも、下川は加工場のすぐ近くに森があるから、もっと自分たちでできることがあるはずで。新しいアイディアが反映されたものも、もっといろいろやってみたい。そのおもしろさを一緒につくっていける仲間が増えると、できることも広がると思います」
わたしが、実際にフォレストファミリーの方々とお話して感じたのは、工場で働いて実際に手を動かすひとたちが、それぞれ自分たちの仕事やモノづくりにこだわりを持っているということ。
現場で動いているひとが、目の前の木材が誰にどう使われるのかを想像しつつ、下川の木材の未来を見ながらモノづくりをされている印象を受けました。
チャンスは、それを望み行動するひとの前にある
森林組合の意思を継いで、今まさに磨き上げている最中の“フォレストファミリーらしさ”。それを拡張させながら、地域に根ざした企業であり続けるために、新しく人材募集に踏み切った山下社長。
「森林組合を辞めて3年。自分たちの利益を得ることよりも地域にお金が落ちるかどうか、資源をしっかり使えているかどうかを最優先に考えてきた。同じような意識があるひとであれば、いつでもバトンタッチしようと思っていますよ」。
そう話す山下社長に、これから入ってくるひとに期待する素質や思いを伺いました。
(以下、山下邦廣)
僕の会社は、親族で経営している同族会社じゃないから、株主になってもらえば、誰でも社長になることができます。
ある程度、経営を司る役職についたら、なんでもできる。
僕としては「自分はこういうことをやりたい」、もっと言えば「自分が経営者になる」っていうくらい意識の高いひとにもチャンスのある会社でありたいと思っているから。
全員が在庫管理だとか仕入れだとか、会社が動かしている数字に気を配れば、赤字だったものも黒字に変えられるんです。社長だけとか、誰か一人がそれを見ているだけじゃダメで。
それに、今のうち(会社)のタイミングは、チャンスを得やすい時期だと思いますよ。それを司る人間が高齢になってきたから、そろそろね。
ただ、何を始めるにも、いきなり何も知らない人間がポンッと入ったって信頼関係が築けていない状態ではむずかしい。だからまずは、下川のことを知ることが大事だと思います。そして、うちの会社が何を目指して、何をしているのかを知ること。知ろうとする姿勢があって初めて周りも「教えてやろう」って気持ちになると思うし。周りが認めてくれるような人間性であれば、そのひとにとって一番良い携わり方をしてくれればいい。
そのためにも、出会いの場が必要だと思いますね。部署だけで集まって飲んだり、ずっと同じ取引先としか付き合わなかったりすると、世界が狭まっていくでしょう。
例えば木と鉄を組み合わせるハイブリッドな商品なんかは、子ども向けの遊具にぴったりです。鉄だけだと冷たい感じがするけど、木材をそれにかぶせることで、すごくやわらかさが出る。あと街灯とか車止めとか……身近なところに、木材をもっと活かせるヒントが転がっているはずです。そういうところに、気付けるかどうか。そして、実行に移せるかどうか。
もし、何かをやろうと思った時にひと同士の繋がりがあれば、どこかでお互いのニーズが合うかもしれない。一部の人間だけでチャンスを独り占めするんじゃなくて、誰かと協力して実行に移すということが、できるかもしれない。だから僕も、積極的にひとがいる場所には出て行ったし、若いひとにもどんどん新しいひととの繋がりをつくって欲しいと思いますね。
今の僕の夢?
そうだな……導入した3Dルーターを使って新しい物を生み出したり、体育館や牛舎に使われている大断面をつくったり……。あとね、日本の広葉樹の工場をつくりたい。
夢は、この下川にあるんですよ。
下川町のものづくりの中でもトップランナーであるフォレストファミリー。これからの未来を見据え、会社の右腕候補となる人材や後継者の募集を開始しました。
フォレストファミリーから下川の森、ひいては北海道や日本の森林資源の魅力や歴史が、ここから生まれ変わるかもしれません。
文(一部写真):立花実咲
写真:伊佐知美
(この記事は、北海道下川町《下川町産業活性化支援機構》と協働で製作する記事広告コンテンツです)
下川のローカルベンチャー「シモカワベアーズ」募集開始!
北海道下川町で、“好き”や“やりたい”を仕事にすべく下川町に集った人々の共同体を「シモカワベアーズ」と名付けました。このベアーズの仲間を、現在様々な切り口で募集中。下川フォレストファミリー株式会社さんの就業先もあります。興味のある入り口から、下川町で“やりたい”を実現してください。
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この会社について
会社名:下川フォレストファミリー株式会社
代表:山下邦廣
設立:2014年
住所:北海道上川郡下川町南町141番地
電話番号:01655-4-3544
従業員:20名