花のなかでも、誰もが一度は目にしたことがあるであろうバラ。美しいだけでなく、力強さとエネルギーがある花のひとつです。
色とりどりのバラを、名産地であるケニアから直接仕入れ、日本に届けている萩生田愛(はぎうだ めぐみ)さんに、バラを取り巻く国を超えた女性たちの今と、花屋としての展望をうかがいました。
一輪のバラがアフリカのひとを救うかもしれない
世界には、約3万種類のバラがあると言われています。ケニアは、世界でも有数のバラの産地。ケニアと聞くとアフリカの暑い国を想像しますが、萩生田さんがバラを仕入れている先のナイバシャという地域は、標高が高く、一年を通して最高気温が28度ほどで日本より涼しいくらいです。
萩生田さんが、なぜケニアのバラに注目したのかという理由は、学生時代の経験にありました。
「アメリカやスペイン、オーストラリアなどの海外に長期滞在したり留学したりすることが多く、同時に国際問題に直に触れて考えさせられることもありました。特にアフリカの貧困問題については、模擬国連 (Model United Nations)に参加したことがきっかけで、教育・雇用制度が十分に整備されていない現状を知って、なんとかしたいという思いがふつふつと育っていったんです。」
その後、6年以上務めた会社を辞め、ケニアへ飛んだ萩生田さんは、仕事がなくて生活に苦しむ人々を目にします。生活の中で感じるカルチャーショックも重なり、考え込む日々。そんな時、住んでいたアパートの近くの露店で見つけた鮮やかな色のバラに惹きつけられました。
「もともと、カラフルなものや綺麗なものが好きなんです。だから、ケニアの独特の色彩と大ぶりなバラの花は、ひと目で大好きになりました。そして、このバラと、ケニアの貧困問題を結び付けられないかと思ったんです。ケニアのバラを日本に輸出することで仕事が生まれ、持続的なビジネスになれば、ケニアの人も日本の人も、幸せになれるのかもしれないと思いました。」
バラは女性の象徴
バラの華やかさと存在感は、ほかの花をも凌駕するもの。萩生田さんにとって、バラという花はどんなものなのかを、伺ってみました。
「女性の象徴、というイメージですね。ただ豪華で綺麗だというだけではなく、エネルギーを感じられる花だと思います。
ケニアの女性は、シングルマザーも多く、暮らしの環境も日本に比べたらずっと過酷です。けれどそれに対して諦めたり嘆いたりするのではなく、今の環境に感謝して力強く生きている女性が多いんです。」
ケニアと日本では、確かに自然環境も暮らし方もまったく違います。ふたつの異なる国に生きる女性たちも、やはり違うのかをうかがうと、萩生田さんは国の違いはあまり関係ないと話します。
「どこで生きるかということより、どう生きるかということだと思います。日本でもケニアでも、お金持ちなのにいつもイライラして怒っている人もいるし、逆に貧しいけれど笑顔を絶やさない人もいます。」
貧富の差が激しいため、花を飾って愛でるという文化が、決してケニア全体に浸透しているわけではありませんが、バラは国民にとって誇らしいもののひとつ。美しいものに心躍るという感覚に国の違いが関係ないように、暮らしも、環境の受け止め方次第で良くも悪くもなるのかもしれません。
知ってもらうのを待つのではなく、届けに行く
もうひとつ、ケニアのバラにこだわった理由があると、萩生田さんはいいます。
それは、ケニア産のバラの特徴的な色。日本にはないこの色味は、バラをよく知らない人でも気づくほど、はっきりとしたグラデーションを作っています。
「誰かを驚かせて喜んでもらうような、サプライズをするのが昔から好きでした。花は花でもふつうのものではなくて、こういうちょっと珍しいものをあげたら、喜んでくれるかな?と思ってわくわくするんです。」
「もちろんケニアの貧困問題から始まったアイディアではありますが、扱うなら私自身も好きなことをしたいと思って、ケニアのバラを選びました。それから、じつは私、お花が好きなのによく枯らせてしまっていたんです。ですがケニアのバラは強くて、しかも日保ちがするので、安心できるんですよね。」
現在は公式サイトと、定期的に都内に露店を出店して、ケニアのバラを広めている萩生田さん。海外の情勢の問題で延期になってしまいましたが、バラ農園を巡るツアーも企画中で、今年中に実行したいといいます。
「お店を持たないんですか、ということも聞かれますが、それよりもPRに投資したいなって、今は思っています。
それに、お店を持つとお客様を待っていなくちゃいけない。私としては、待ちの姿勢ではなくて、届けに行きたいと思う気持ちが強いので、もし実店舗を持つとしても、営業形態はよく考えたいなと思います。
標高の高い土地でビニルハウスを使いながら、丹精込めたこのバラは、どんな人がどんな想いで育てているのかを、お客様にも知ってもらいたいですね。そのためにツアーや、日本ではケニアのバラを使ったフラワーアレンジメント教室も開催しています。実際にケニアのバラに触れて、その良さを感じていただけたら嬉しいです。」
- 「アフリカの花屋」フラワーアレンジメントスクールの生徒募集について
強く生きる女性の手で作られた、凛と咲くケニアのバラたち。誰かへの思いを伝えるとき、ちょっとだけ元気を補充したいとき「アフリカの花屋」のバラが、手助けしてくれるかもしれませんね。
(写真一部提供:萩生田愛)
このお店のこと
アフリカの花屋
参考価格:ディープパープル(写真の一輪)10本1セット 5,000円
公式サイト:アフリカの花屋サイト