富山県を中心として、北陸地方の一部で使われる「きときと」という言葉。キラキラほど軽やかで華やかではない。どこか貪欲で、決して洗練されていない汗臭い感じ。日本海の荒波を泳ぎ切った、力強い魚の、びちんびちんと跳ねるほど活きのいい様子、また魚の光沢を「きときと」と表します。
でも、濁点をつければとたんに「ぎとぎと」。油がこびりついて、時間が経って、誰も触りたくないようなキッチンの裏側のような言葉に変わります。点を取ると、とたんに真逆の意味に変わる。きときとはいつでもぎとぎとに成りうる。時間の経過によって、廃れてゆくか、威勢の良さを守り続けるか。それは心に一点の澱(てん)、すなわち卑屈になったり必要以上に消極的になって心によどみがあるかどうかで、大きく変えられる。
そんな表裏一体を感じることばです。
お国ことば解説
きときと:新鮮、活きがいい、精力的な様子を表す。富山県、石川県の一部で使われる。