いつだかわたしの母が、「たまらん、すいとー!」と言いながら、わたしの頭をもみくちゃに撫で回したことがある。
福岡に住むわたしの従姉妹も「こればりすいとーよ」と言ってお気に入りのぬいぐるみを見せてくれたりした。
すいとー……水筒? と当時幼かったわたしは思った。でも、「すいとー」と言いながら相手に向かう眼差しは、どこかやさしくて少し涙ぐむくらい顔をくしゃくしゃにしていたような気がする。
「すいとーもんに理由なんてなかろうもん」と母は言う。いつだって、心惹かれるものはフィーリング。その感覚を、少しずつ磨いていくと、自然と「すいとー」に囲まれているらしい。
わたしの「すいとー」はどこにあるのかな。意外と近くにあったりするのかな。
考えるほど遠のいて、感じるほど近づいてくる、ふしぎな「すいとー」の気持ち。
お国ことば解説
すいとー:福岡県の方言、博多弁で、好きの意味。かわいい方言ランキングの上位に毎回くい込む言葉のひとつ。「ばりすいとー」は「とても好き」の意味。