「灯台もと暮らし」で、何度かご紹介している東京の西荻窪(以下、愛を込めて西荻)。

歴史のある喫茶店や書店、ライブハウスから、個人で営む雑貨屋さんやカフェも並び、ファンが増えている地域のひとつです。

今回は、民家を改装した「松庵文庫」さんで「ことりっぷ」web編集部と「中央線あるあるプロジェクト」主催でトークイベントが行われました。

西荻イベント

登場するのは、もとくらでも何度もお世話になっている、食とセラピー「ていねいに、」の福田さんと、弊社代表の鳥井です。

福田倫和さん

福田 倫和(ふくだ ともかず)

鍼灸あん摩マッサージ指圧師。西荻生まれの西荻育ち。2013年に食とセラピー「ていねいに、」をオープン。
参考:【西荻窪・朝】ごはんを毎日「ていねいに、」食べよう

鳥井弘文

鳥井 弘文(とりい ひろふみ)@hirofumi21

1988年北海道生まれ。ブログ「隠居系男子」、Webメディア「灯台もと暮らし」を運営している株式会社Wasei代表。

テーマは「ガイドブックには載っていない西荻窪の楽しみ方、教えます」。さてさて、どんな耳より情報が飛び出すのでしょうか。

西荻にチェーン店がない理由

鳥井 弘文(以下、鳥井) 今日は、よろしくお願いいたします。福田さんは、生まれも育ちも西荻だと伺いました。

福田 倫和(以下、福田) そうなんです。就職と同時に、一度西荻を出て、長野や新潟でも働いていたんですが2012年に地元であるここに戻ってきました。その翌年に、食とセラピー「ていねいに、」というお店をオープンし、それからはずっと西荻です。

鳥井 いろいろな場所で暮らしてみて、それでも西荻に戻ってきたいと思った理由は、何かあったんですか?

福田 特に西荻のここが好き!という気持ちは、昔は全然なかったんですよ。生まれ育った場所だから、すべてが当たり前だったので。でも、改めて戻ってくると、誰でも何でも受け入れてくれるような雰囲気があるなと感じます。こだわりがある方もたくさんいるけど、それを相手に押し付けないというか。それが居心地がいいですね。

鳥井 来るもの拒まず去るもの追わずみたいな空気は、福田さんが子どもの頃からあったんでしょうか。

福田 当時のことを明確には覚えていませんが、僕らの親世代は、いわゆるヒッピーと呼ばれるひとたちが集まる地域だったようです。その名残なのだと思いますが、自然食品のお店やカレー屋さんが多い(笑)。住んでいる方々の懐が深くて、どんなひとでも受け入れてくれるから、ちょっとマニアックなひとやお店も集まってくるのだと思います。

福田さん

鳥井 そんな西荻も、ここ最近はテレビや雑誌でも何度も取り上げられて、注目されていますよね。

福田 人気がではじめたのは、2〜3年のことだと思いますよ。僕らのお店の「ていねいに、」も、もともと金物屋さんだったんですが、ご主人がちょうどお店をたたむタイミングに僕らが入らせてもらったんです。ここ(松庵文庫さん)も、もともと民家でしたし、ちょうど世代交代の時期に新しくお店をやる僕らのようなひとが多かったのかなと思います。

あとは、お隣の吉祥寺だと家賃が高すぎるから西荻に移ってきて、お店のファンたちも西荻に通うようになったという動きがあるような気がします。

鳥井 本当に、こじんまりとした個人でやられているお店が多いですよね。

福田 そうですねぇ、スターバックスもないですし(笑)。

鳥井 スタバがない理由を、イベント前の打ち合わせで伺ったんですけど、僕はそれがすごく腑に落ちました。

福田 スタバをやるには、西荻の物件って面積が小さすぎるんですよね。空き家になったところへ出店しようと思っても、個人でやるお店にはちょうどよくてスタバみたいな大型のチェーン店をつくっても、お客さんがたくさん入らない。だから、ないのかなぁって思います。

オシャレすぎず、田舎すぎず

鳥井 お店をやっている方の顔が見えるというところが、西荻の魅力をつくりだしているんですね。

福田 もちろん、素敵なお店も多いんですけど、西荻は意外と緑が多いんですよ。僕は、カフェや雑貨屋さんみたいなオシャレなお店と、自然に囲まれた善福寺公園や井草八幡宮などが共存してるバランスの良さも、西荻の良さだと思います。

善福寺公園も井草八幡も、駅から徒歩15分くらいなので、あんまりひとがいないんです。でも、そこがいいかなって。

善福寺公園の様子(【西荻窪】こだわりの味をお持ち帰り。ちょっぴり上級者向けの西荻昼散歩より)
善福寺公園の様子(【西荻窪】こだわりの味をお持ち帰り。ちょっぴり上級者向けの西荻昼散歩より)

お客さん 私、西荻と吉祥寺の境目に住んでいるんですけど、吉祥寺にある井の頭公園は、とにかくひとが多くって。春になると桜を見に来るひとたちで溢れて……ゆっくり歩くと邪魔になっちゃうんです。

福田 井の頭公園はいつ行ってもたくさんひとがいますね。

お客さん でもこっち(西荻)なら、ゆっくり歩いても大丈夫。散歩していても楽しいなって思いますね。

福田 吉祥寺は遊びに行くだけなら楽しいんですけどね。善福寺公園にも桜もありますから、春は穴場ですよ。

町歩きで一日過ごせる地域が魅力的

鳥井 僕らもいろいろな地域を取材させていただく中で、一日かけて町歩きができるイメージが湧くかどうかで、魅力って変わってくるかもなってことに気づきました。

福田 西荻は、町の広さはそこまで広くはないんですが、一日いても飽きないですよ。

鳥井 福田さんは、お住まいも仕事も西荻ですが、ここ以外で過ごされることもあるんですか?

福田 いや、僕は電車に乗るのは月に一回くらいしかないですね(笑)。

鳥井 月に一回ですか!

福田 隣駅の荻窪や吉祥寺へは自転車で行けますが、大きな買い物がある時くらいにしか行く必要がないんです。だから、気づいたら1ヶ月近く電車に乗っていなかった、なんてことも多いですよ。

でも、西荻にはそういう方、結構いると思います。「ていねいに、」にも他のお店のご主人がご飯を食べに来たり、僕が西荻の喫茶店でお茶を飲みに行くことも、よくあります。町の中で経済を回している感じですね。

鳥井 「西荻を盛り上げよう!」というような、共通意識みたいなものが、あるんですか?

福田 そうでもないですよ、みんな自由に好きに過ごしていた結果、町の中で過ごすことが多くなったっていう感じだと思います。そういう姿が、結果的に西荻らしさになっていったんじゃないでしょうか。

だから別の地域から遊びに来る町というよりも、暮らすのにぴったりな町だと思いますよ、西荻は。

福田さん

鳥井 じゃあ西荻で暮らすデメリットって、ないんですか?

福田 うーん、強いて言えば、土日は快速の中央線が止まらないことくらいですかね。でも、それももはや自虐ネタみたいになっているので、本当に電車が止まらないのが不便で嫌だと思うひとは、荻窪近くとかに引っ越しちゃうと思います(笑)。

鳥井 西荻を知るには住むのが一番、ということがすごく伝わって来ました。福田さん、ありがとうございました!

常連さんにも一見さんにもやさしい西荻

鳥井 続いては、ことりっぷwebチームに引き継ぎ、西荻に来たら行きたいお店をご紹介していただきたいと思います。よろしくお願いいたします!

平山 高敏(以下、平山) よろしくお願いします! 今回のイベントの前に、編集の島田と、改めて西荻を歩いて回ってみたんですよ。そうしたら、他の街の個人のお店って入りづらいところが多いのに、西荻のお店はそういう雰囲気が、どこもまったくなかったんですよ。

島田 零子(以下、島田) 本当に、お店の方とお客さんの距離がちょうどいいですよね。私は昔、西荻と同じ中央線沿線である中野に住んでいたことがあって、西荻によく来ていたんですね。中野から引っ越してからは、しばらく来ていなかったんですが、5年くらい前からまた通い始めました。

島田さん
島田零子さん

平山 (お客さんに向かって)今日、お配りした茶封筒の中に、QRコードが書かれた島田お手製のカードが入っています。

それを読み取っていただくと、Googleマップが出てくるんですが、「ことりっぷ」のwebでも本でも、まだ出ていないおすすめスポットを30ヶ所くらいまとめました。

平山さん
平山高敏さん

島田 私が中野から通っていた当時からあるお店や、最近できたところまで、いっぱいあります。

中野に住んでいたときは書店員だったので、勉強を兼ねて中央線沿線の本屋さんを回ることも多かったんですが、西荻の今野書店さんに初めて来たときは、衝撃的でした。

店員さんが、「いらしゃいませ」だけじゃなくてお客さんと会話をされていたんです。そういう本屋さんは今まで見たことがなかったので、本当に驚きましたし、町の書店として素晴らしいお店だと思います。

平山 本屋さんがそこまで町で暮らすひとに身近に接してくれるのって、なかなかないですよね。

島田 以前、お店のDMをお客さんに託して、他のお店に持って行ってって頼んでいるところを見たことがありました。商売敵だと思っていないっていうか、同じ西荻でお店を構えているひと同士も仲がいいし、フラットな関係だなって思います。常連さんとの付き合いもありつつ、一見さんにもやさしいですしね。

平山 いろんなお店に通うと、西荻の魅力が肌感覚として伝わって来るのではないでしょうか。

島田 ただ、本当に素敵なお店がたくさんあって、一日で回るのはとても無理なので、こういう西荻で開催されているイベントとかワークショップに参加してみると、参加者同士でも仲良くなれるし、ただお店を巡っているだけじゃない楽しみ方ができるから、オススメです。

もし、たくさん西荻に通って住みたくなったら、福田さんに相談してみてくださいね。

知るひとぞ知る西荻窪の名店たち

西荻イベント

イベント中、生粋の西荻っ子である福田さんと、西荻通の編集者・島田さんから、様々なお店や見どころを紹介していただきました。

お客さんからの質問には、おふたりならではの見どころを伝授。お客さんも忙しくメモを取っていました。

(1) 和菓子好きなら「喜田屋」へ

駅の北口を出てバス通りを歩いて行くとある「喜田屋」さんはオススメです。豆大福が大人気で、午前中に行かないと売り切れちゃっているんですよ。(福田さん)

(2) 西荻のフォトジェニックなスポットは?

ちょっと駅から離れるんですけど、観泉寺っていう曹洞宗のお寺が、すごく綺麗です。ひとが全然いなくて、シーンとしていて厳かな感じ。京都のお寺みたいです。

あとは……東京都立農芸高等学校っていう高校があるんですが、馬を飼っているんですよ。都内で唯一の馬術部があるんですけど、強豪校らしいです。高校まで行けば馬を見ることもできますよ。(福田さん)

(3) 手づくり雑貨が集まる「FALL」

有名どころですが「FALL」(フォール)さんはファンが多いお店です。

いつもクリエイターさんや作家さんの作品を展示したり販売したりしています。有名な方というよりは、個人でやられている方が多いみたいです。この前は染物の雑貨を販売していました。(福田さん)

(4) 純喫茶「どんぐり舎(どんぐりや)」

「どんぐり舎」さんは、僕が学生時代にバイトしていた喫茶店なんです。このお店でコーヒーの味を覚えたようなもので、僕にとってはお袋の味みたい。今でも通っています。(福田さん)

どんぐり舎さん、私もすごく好きです。どんぐりクッキーやジャムトーストがお気に入りです。(島田さん)

(5) ベトナム料理が美味しい「nom ca phe(ノムカフェ)」

ご飯を食べるなら「nom ca phe(ノムカフェ)」さんがオススメです。ベトナム料理のお店なんですけど、ご夫婦でお店をやっていらっしゃって、居心地のいいお店です。飲み屋っていうより定食とかお茶を楽しめるお店ですね。(福田さん)

  • 参考:nom ca phe|公式サイト

(6) オススメの自転車屋さんは?

西荻にはいくつか有名なお店がありますが「ARROW TRADING(アロートレーディング)」さんっていうオーダーメイドの自転車屋さんは人気です。ここでつくった自転車は「アロチャ」って呼ばれます(笑)。

あとは「和田サイクル」さん。小さい折りたたみ自転車が好きなひとたちの間では、すごく有名な自転車屋さんです。見た目は普通の自転車屋さんなんですけどね。僕も中学校の時は、和田サイクルさんで自転車を買ってもらいました。(福田さん)

(7) かわいらしいお菓子屋さん「Kies(キーズ)」

最近できたお店ですと、「キース」っていうお菓子屋さんは、オススメですよ。クッキー一枚から買えるお店なんですが、女性が一人でやっていらっしゃって、ミントグリーンのドアがすごくかわいい。レモンケーキが、とっても美味しいです。(島田さん)

(8) 一年限定でオープン「壱年茶虎」

西荻で1年限定でお店を構えている「壱年茶虎」さんは、もともと三鷹で1日2組限定で中華の懐石料理のようなお料理を出していた方々なんですが、2017年12月30日まで限定で、オープンしています。

懐石料理というと敷居が高い感じがしますが、アラカルトで食べられるので、少人数でも行きやすいですし、たくさん食べられなくてもいいですし、居心地が良いです。あと、麻婆豆腐がすごく美味しいですよ。

ただ、居抜き物件に入って期間限定で開店しているお店なのか、看板はなくて、分かりづらいかもしれません。前入っていたお店の看板が、出たままになっているし(笑)。でも、そういうゆるい感じも含めて、いいお店だなと思います。

自分だけの西荻を探しに

「灯台もと暮らし」の西荻窪特集のコンセプトは、「帰りたくなる町に暮らそう」でした。

それは筆者(編集部・立花)が、実際に西荻で数年間暮らしていて気づいた魅力を届けたいと思ったから。2017年4月で東京を離れてしまう筆者ですが、もし都内でもう一度住む場所を選ぶなら、迷いなく西荻にします。

というのも、暮らしているひとにとっても、遊びに来るひとにとっても常に新しい発見があるから。自由にやりたいことをやる人々が集まり、つくりあげたお店や商品はどれもここでしか手に入らないものばかり。自分だけの行きつけや名店を探す楽しみも尽きません。これだから、西荻通いはやめられないんです。

松庵文庫

(写真:伊藤メイ子

(この記事は「ことりっぷ」と「中央線あるあるPROJECT」と協働で製作する記事広告コンテンツです)

会場になったお店

松庵文庫

松庵文庫
住所:東京都杉並区松庵 3-12-22
電話番号:03-5941-3662
営業時間:11:30~18:00
定休日:月曜日、火曜日
公式サイトはこちら