高知県嶺北地域・土佐町の暮らしを届ける「今日の一枚」。家族で移住した鳥山百合子さんには、ご自身のお母さんと、頼りにしているという土佐町のお母さんの、ふたりのお母さんがいるそうです。今日は、“お山のお母さん”についてのお話。
私には、お母さんがふたりいます。
ひとりは私を産み育ててくれたお母さんで、神奈川県在住。
もうひとりは和田計美さんという、土佐町で暮らすお母さんです。
「もしもし、計美ですー。玉ねぎの苗いるかね?」とか、「らっきょうの日はいつにしようかね?」と土佐町のお母さんから、よく電話がかかってきます。
らっきょうの日、というのは、毎年6月におこなわれる恒例行事で、計美さんの畑から収穫したらっきょうの根っこをとり、きれいに洗う、という作業。私は毎年この日を楽しみにしていて、カレンダーに大きく丸じるしをつけます。
作業も楽しいのですが、なにより楽しみなのは計美さんのつくってくれるお昼ごはん。
- ちらし寿し(計美さんが作った干したけのこ、干ししいたけ入り)
- ぜんまいの煮物(計美さんの家で収穫したぜんまいを、切らずに麺のように長いまま煮る。贅沢な食べ方!といつも思う)
- 季節の野菜のかきあげ(玉ねぎやピーマンなど計美さんの畑でとれたもの)……などなど
計美さんは季節の保存食づくりの名人です。麹からつくる味噌、漬物、干し大根、東山(干し芋)、干し柿、にんにく味噌……と、教えていただいた料理法は数え切れないほど。いそがしいなか、日記を毎日つけているところも素敵だなと思っています。
今まで、計美さんの存在に、何度もはげまされ、助けられてきました。
ある日送ってくれたはがきには、紫陽花のことやこどもたちを気遣うことばがならび、最後に「いつでも上がってきなさい。お山のお母さんより」と書かれていました。計美さんのお家は、標高およそ600mのところにあり、棚田の間の道をまさに「上がって」いくのです。
このはがきは私の宝ものです。
お山のお母さんの知恵も心意気も、存在そのものが私にとって大切な学び。学ばせていただいていることを、次は私がこどもたちへ引き継いでいきたいと思っています。