高知県嶺北地域の本山町。事業家でプロブロガーのイケダハヤトさんは、ここに、夫婦ふたりと、ふたりのお子さんと、4人家族で暮らしています。
イケダさんが運営するブログ「まだ東京で消耗してるの?」は、そのタイトルの通り、過激な物言いで物議を醸すこともありますが、その裏には、穏やかな夫としての顔、父としての顔があります。
【夫婦対談】後編となる今回は、高知県に移住してからの物語をおふたりに語っていただくと同時に、嶺北に来てからイケダハヤトさんの変わったところ、好きなところを、ミキさんに語っていただきました。
イケダ ハヤト
1986年神奈川県生まれ。2009年に早稲田大学政治経済学部を卒業。社会人3年目に独立。著書に『年収150万円でぼくらは自由に生きていく(星海社)』『武器としての書く技術(中経出版)』『新世代努力論(朝日新聞出版)』『まだ東京で消耗してるの? 環境を変えるだけで人生はうまくいく(幻冬舎新書)』などがある。
イケダ ミキ
1986年生まれ。早稲田大学卒業。元銀行員。最近は「ローカルあんぱん」をつくっている。時間に追われることがきらいらしい。料理が上手で、イケダハヤトさんが運営するnoteの有料マガジン「今日はどんな実験をしよう。」では「イケダミキの土佐レシピ」としてその腕前を振るっている。
嶺北に来た今のほうが楽しい
ミキ 最初、嶺北に来たときは、やっぱりちょっと不安だったなぁ。実際に物件を見たとき、山の道がすごく狭くて高知に来てから免許を取ったし運転できるか心配だった(笑)。って言っても、実際お家を見たら、住んでみたいなって気持ちのほうが大きかったけど。
ハヤト 高知市はすごく便利で、見方によっては多摩市より便利だよね。30万人都市だから、ある意味都会。でも僕のイメージでは、糸島とか飛騨古川とか、もう少しコミュニティが小さくて、顔の見える範囲で何かをやっているようなところに住みたかった。
家を探している中で、れいほく田舎暮らしネットワークの川村さんに出会った。その時はじめて、おもしろいひとたちがたくさんいるなぁと知って、ここにしましょうと決めた。
ミキ 私も、嶺北に来た今のほうがすごく楽しいな。東京にいた頃はちょっとだけ、つまんかったところがあるんだ。町を歩いていても、いつも一緒で。季節が変わっても、あまり変化は感じられないし、お店もチェーン店しかなくて。こっちでは季節のものが市場に出ていて、それを買ってきて何をつくろうかなとか考えること自体が楽しい。
嶺北の暮らしは、春になると忙しい
ハヤト うん。日々、楽しいね。朝起きて、ごはんをつくって……下の子が生まれて1か月くらいは僕もつくっていたけど、最近はサボッている(笑)。
ミキ そうだよ(笑)。すぐにパソコンに向かってブログを書いているよね。
ハヤト ブログを書いて、ご飯できたら食べて、ずっと書いて、いつの間にか12時になってお昼ご飯を食べて、気がついたら夕方になっている(笑)。
ミキ ははは(笑)。
ハヤト 下の子が生まれたときはてんやわんやだったけど、最近は集中して仕事ができるようになってきたよ。あなた(次女)が育てやすい子だからね。手間がかからない。
嶺北は、季節によって生活が変わるのもいいんだよね。まだここでは秋と冬くらいしか経験していないけど、春になると忙しいね。気がついたら山菜のワラビが全部デカくなって食べごろを逃したり。
自分の「生業」をつくりたい
ミキ 私は子育てが落ち着いたら、ひとりでも生活できるくらい稼いでみたいなぁ。移住してきた方が自分でお菓子をつくったり、「お山の手づくり市」で出店したりしているのを見ていると、仕事と生活を一緒にしていきたいと思う。
ハヤト 生業を自分でつくる感じだよね。子どもと一緒にできる仕事を探せたらいいよね。今はパンをつくっているじゃない? このあいだも手づくり市に出店して、好評だったよね。
ミキ 基本は飽き性なんだけど、パンをつくるのが好きで、パンづくりは続いているから。パンに限らず、手を動かす何かがしたいかな。
ハヤト 詩を書くというのはどう? 読みたいな。
ミキ んー、でも、苦手意識があるんだよね。話すことも、文章にすることも。
ハヤト 文章より、詩とイラストがいいよね。noteで詩を出すというのは? 絶対ウケるよ、絶対。
ミキ 勝手に話を進めないで(笑)
ハヤト おもしろいじゃん。
ミキ 文章を書くことが、上手にできるようになったらいいなぁとは思うし、言葉にしたい欲求はあるかも。でも、それを仕事にしたいとはあまり思わないかな。
ハヤト 今は、育児が忙しいからね。なんだかんだ言って、パパッとやれるものではないし、がっつり時間取らないとなかなかできないからね。でも、何か書いてくれたら嬉しいなぁ。超いいと思う。絶対ウケる。
ひとを褒めるのが上手
ミキ うん、ウケるのはわかったよ(笑)。はっくんはすごく、ひとを褒めるのが上手だよね。私に対してももちろんそうだし、一緒に働いてくれているひとに対しても、何かしてくれたから褒めるわけじゃなくて、期待をするよね。料理しても、絶対に美味しいって言ってくれる。
ハヤト 実際、美味しいからね。
ミキ あんまり深く考えていなさそうなのに、サッとひとのいいところを見つけて、褒めてくれる。
ハヤト すごい。自覚はないけど、その観点は面白いなぁ。僕は優秀なひとしか好きじゃないから、そもそもフィルタリング済みなんだよね。
ミキ アシスタントさんとかも、サッとメールだけで決めて雇うじゃん。
ハヤト あぁ、それは僕に見る目があるからだよ(笑)。ずっとデジタルの海で泳いできたから、相手のTwitterのアカウントを見れば、どんなひとか一発でわかる。やっぱり、一回潰れたことあるひとは基本強いんだよ。レールから外れた経験があるひと。
ミキ そういうひとばっかりだよね(笑)。
ハヤト 全員そう(笑)。うつ病だったり、パニック障害があったり、みんな挫折経験がある。矢野さんは、スーツを着られないから就活をしなかったんだよ? おもしろいじゃん。そういうひとたちはすごいんですよ。他のひとができないことをするしかないので、優秀にならざるを得ない。生き抜かなきゃいけないという危機感もある。
ミキ 自分が生きにくい分、他人に対しても優しくなれるんだね。
ハヤト うちにいるひとたちはみんなそう。そもそも自分が病んでいるとか、ちょっとおかしいところがあるので、他のひとをおかしいって思わない。だから逆に、何の違和感もなくサラリーマンできちゃうひととは、あんまり仲良くしないようにしてる(笑)。レールを外れざるを得ないような特質を持っているひとは褒めれば絶対に伸びるんだよ。実際に仕事ができるので、任せられるしね。
ミキ はっくんは褒めるのが上手だから、周りのみんなが成長できるんだよ。
ハヤト そうなのかな? 嶺北は、ドロップアウトしたひとを受け入れられる土壌があるはず。そういうひとたちの能力は絶対に伸びるから。彼らが入ってきてくれることで、僕の事業にもメリットがあって、非常に合理的。サラリーマンをできるひとはどこに行ってもいいわけだから、嶺北はむしろ、変なひとがたくさん集まってくる土地にしたい。
イケダハヤトの変わったところ
ミキ うんうん。そういうところは、変わったところかも。昔はもっとトゲトゲしていたんだよ。どうしても、一緒に暮らしていると合わせなきゃいけないところはあって、昔はそれでケンカしてしまうこともあったけれど、今は気持ちよく過ごせるようになった。
ハヤト うん。それは子どもの影響も大きいよね。子どもたちから学ばされることは本当に多いなぁ。彼女たちはいろんなものにこだわりがなくて、非常に賢い。余計なことを考えないから。
ミキ 将来の不安とかないしね。
ハヤト そう。価値判断のあり方が素晴らしいんだよ。これくらい小さいと、いろんなものの区別がないから、何事も分け隔てなくものを見ていて、あらゆる世界を同一視している。ちょっと哲学的な話だけど、彼女たちの姿から得る学びがすごく多い。
もちろん子どもたちからストレスを受けることや、イラッとさせられることもあるけど、それ自体、修行になるんだよね。自分の人格を高めるチャンスになる。
ミキ 子どもたちがいるだけで、純粋に楽しい時間が増えるんだよ。
ハヤト 笑顔が確実に増えるよね。それは本当にいいこと。なかなか夫婦ふたりだけだと、常にニコニコってわけにはいかない。でも、子どもがいると自然と笑顔になるタイミングがすごく増えるんだよね。
ミキ はっくんは本当に、よく笑うようになったよ。子どもたちのおかげだね。
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